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「じゃあ俐音、そんなに言うなら何とかしてみてよ」

 自分達兄弟のあり方が異常だなんて事は百も承知だ。
 こうなるようにと仕向けたのは父親で。
 異なる母親から産まれたことに端を発した歪みはもう、樹達自身では修正のしようがない。

 このまま流れに乗って、行くところまで行き着いても良いと思っていた。
 とことんまで響を陥れてやりたいという考えだってある。

 だけど、赤の他人がここまで言うのなら。

「間違いとやらを、失くしてみせろよ」

 マンションのエントランスで一人ぽつんと立つ姿に彩は駆け寄った。
 背中を向けているけれど見間違うはずがない。

「俐音そんなとこでどうしたの? 入らないの?」

 少し間を置いてから振り返った俐音は、目を丸くして彩を見た。
 そしてその後ろに小暮がいるのに気付いて、ああと頷く。

「デート楽しかった?」
「え!? ……う、うん」

 寒さは関係なく顔を赤くする彩に俐音はもう一度頷いた。
 どうやら二人でクリスマスを満喫してきたらしい。

 初めから、彩達は夕方から合流することになっていた。
 もうそんな時間になっていたのかと内心焦りながらも、ゆっくりとした足取りでエレベーターに乗り込んだ。

 一体どのくらいあそこに立っていたのか。
 みんなに変に思われなければいいけれど。

「ただいま」

 玄関のドアを開けた瞬間に食べ物の匂いが漂ってきて、俐音と彩は顔を見合わせた。

「おかえり、俐音ちゃんどこまで卵買いに行ってたの。あんまり遅いから心配したよ!」

 エプロンをして片手におたまを持った穂鷹がリビングの方からやってきて、俐音は反射的に一歩後ろに退いた。

「え、ひどくない? その反応」
「酷いのは穂鷹のその、働き者の妻の帰りを今か今かと待つ専業主夫みたいな格好とセリフだ」
「じゃあ俐音ちゃんが奥さんだね」
「どけよ、邪魔で上がれないだろ」

 穂鷹を足蹴にしてすたすたと中に入ったところでまた俐音が立ち止まった。
 テーブルの上に並べられた豪華な料理の数々に呆気にとられたのだ。

 玄関まで漂っていた匂いはこれらしい。
 そしておたまを持っていたという事は穂鷹がこれを作ったという事。

「パーティっぽく豪勢にしてみましたー」
「……冗談抜きで今すぐ主夫なれるよ穂鷹」

 リビングの方に目を移せば他のメンバーはテレビゲームに熱中していた。
 手伝う気はなかったようだ。



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