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「そんな訳だから、間違いなくクラスで候補に上げられるだろうし、そうなったら絶対当選するぞお前等」

 篤志は可哀想にな、とからかいを含んだ笑みを浮かべた。
 そうすると少し子どもっぽく見えるのだが、今の俐音達は気にする余裕などない。

「だから選挙するまでもなく俺達の推薦で決まっといた方が楽だろ。俺達が」
「選挙となると準備とか開票とか面倒なんだよね」
「早く後釜決まった方が、引継ぎさっさと済ませて押し付けられるしな」
「全部あんた等の都合しか考えてないじゃないか!!」

 実際そうであっても本人を目の前にして言うべきではない。

 選挙にだって出るつもりは無いが、絶対にここでこいつ等の良い様にしてやるものかと俐音は威嚇した。

「諦めの悪い奴だな。断るって言うなら――」

 ガァン、と耳を劈く大きな音がして巧は口を閉ざした。
 誰もが身を固くしたまま静止している。

 ただパイプイスを蹴り上げ机に激突させた壱都だけは平然としていた。

「嫌だってさっき言った」

 そして踵を返すと俐音の腕を取って歩き出した。慌てて俐音も彩を引っ張る。
 その瞬間、歪な形にひしゃげて使い物にならなくなったパイプイスが目に飛び込んできた。

 三人が出て行った後、盛大に息を吐き出した生徒会メンバー。

「だから無理だって言ったでしょ? あの子壱都に気に入られてるみたいだから」

 今日ここに壱都がついてくるのは誤算だったが、遅かれ早かれ彼に阻止されるであろうと安部は察していた。伊達に中等部からの付き合いではないのだ。

 さほど壱都と関わりのない巧や篤志にもきちんと忠告はしていた。

「まったく、福原に緒方に……特別棟にいる奴等はとんでもないな」

 小暮に同情する、と心の中だけで付け加えた。
 巧は腕時計を見て昼休みが残り半分を切っているのを確認して舌打ちする。

「おい佐原はまだか?」
「また迷ってんだろ、恐ろしいことに」
「学習能力が欠落してるからね」

 生徒会に選ばれて数ヶ月。
 一年の任期も今学期で終わろうとしているというのに、メンバー最後の一人である佐原は未だ部屋の場所を正確に把握出来ないと言っては迷い、度々遅刻をする。

 ただサボってるだけなんじゃないのかとも思うが、どうやら違うらしい。

「俺、捜してきましょうか?」

 このまま巧の苛々が頂点に達するのを恐れた直貴だったが、巧は制した。

「いたらいたでウザいからいい。今に限ってはいなくて正解だったしな」

 俐音や彩と佐原が遭遇していた場合、収拾がつかなくなっていただろう。
 それを思えば佐原の超人的な方向音痴ぶりにも腹立たない。

「それにしたってどう説得したもんだろうな」

 四人はひしゃげたパイプイスを見た。





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