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「じゃあって何勝手に決めてんですか! 嫌ですよ!」

 急いで拒否した俐音に彩も激しく同意した。

「今断ったってどうせ役員選挙になった時にお前等が選ばれる」
「はぁ?」
「生徒会役員って基本は指名制なんだけど、断られたり特定の人が決められない場合は各クラスから選出された生徒達で選挙する事になってるの」
「はぁ……え? それ俺等がクラスから選出されるって言いたい?」

 漸く話が見えてきた俐音は口元を引きつらせる。
 それを見て篤志がにやりと笑った。

「大学の推薦の為って理由でしたがる奴がいない限りは、当然お前等だろうな」
「どうして」
「文化祭でしょ」

 答えたのは壱都だ。生徒会三人の反応を窺ってから「やっぱり」と零す。

「馨もそうだった」
「緒方先輩?」
「そう。去年の文化祭で宮西と女装したから」

 女装という言葉に俐音と彩がピクリと反応した。
 忘却するにはまだ新しく、そして鮮烈な記憶。

 晒し者にされた苦々しい思い出だ。

 あれを緒方もしたと言う。

「あの時の緒方はまだ背も低かったし、顔も中性的だからね。しかもノリが良い」

 俐音がこの学校に来る前の話だが、安部の言にその時の様子を容易に想像出来る。

「でも、それとこれとは……」
「俺も女装をさせられた。そしてここにいる」

 巧は回りくどい言い方をして俐音を見やった。
 どこまでのヒントで答えに辿り着くのか測っているようだ。

 巧は女装をしたせいで生徒会に入る羽目になったらしい。
 そういえば……と俐音は記憶を巡らせる。

 担任が何か言っていなかっただろうか。

 女装は話題になりやすい、けれどその後の学校生活に影響が出る場合もある。

 確かそのような事を。

「あんにゃろ、このことか」

 でもやはり解らない。どんな繋がりがあって生徒会に入らなければならないのか。

「役員選挙なんてみんなどうでもいいんだよ、誰がやったって大差ないんだから選ぶ時も適当。そんなもんだろ」

 篤志が時計を見ながら言う。
 そして俐音達の方に向き直ってから「でもな」と続けた。

「さぁこん中から選べって時そこに知った顔があったら、大抵はそいつに入れるだろ。しかもそれが女のカッコで校内闊歩してた奴だったら面白がって余計入れると思わないか?」
「……思う」

 自分がもし選ぶ立場なら間違いなくそうする。俐音も彩もだ。

「最っ悪だ……」

こ のところ感じていた周囲の視線もこれのせいだったのだろう。

 あ、あいつがセーラー服着てた奴だ、などと言われていたのかと思うと恥ずかしくて蹲(うずくま)りたくなる。



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