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「馬鹿はお前だっつの。よーく考えろよ? 侑莉ちゃんと一緒にいると苛々するのは何でか、他の奴でそう感じたことあるか、いつでも出て行かせればいいと思ってんのに長続きしてる理由、何で侑莉ちゃんに手を出さないのか」

 マニュアルでもあるのかと疑いたくなるほど、新岳は淀みなくスラスラと質問事項を述べた。

 頭の中で反芻しているのか難しい顔をしている凌にまた笑いそうになって唇を噛む。
 侑莉に戸惑っている理由など、第三者の新岳からすれば問題にならないほど解りやすいというのに、頭のいいはずの凌にとっては難題らしい。

 昔から人を人とも思わない性格で、常に他人を突き放して生きてきたのだから仕方のない事かもしれないが。

 新岳は凌の態度が気にならないからこうやって一緒にいる事も出来るが、凌は将来絶対に女に刺されて死ぬなと思っていた。

 ここに来てそれが変わりそうな予感がした。いや、もうすでに変わり始めているようだ。
 新岳が長年出来なかった事を侑莉はわずか一ヶ月でやってのけた。

「悩め悩め。あと一つ言っておいてやる。俺の予想だと侑莉ちゃんは凌にかなり好意的だ。じゃなきゃ毎日お前のためにご飯作ったりしないし、そもそも傍若無人なお前と暮らせない」

 二人が会話しているところを直接見たわけではないが、凌はいつもの調子できつい言葉を投げかけている事だろう。

 それでもあのマンションを出て行かないのは侑莉が凌を憎からず想っているからだと容易に想像できた。
 ここまで言えばさすがの凌も何か察するだろうと思った新岳は見通しが甘かった。

「別に毎日あいつのメシ食ってるわけじゃない。まずほとんど会ってないし」
「ほ、本物の馬鹿がいる……。毎晩毎晩帰ってくる時間がまちまちなお前のご飯いる日いらない日が侑莉ちゃんに分かるわけないんだから、毎日作ってたに決まってるだろ。そんくらい気付いてやれよ! 更に言うならお前がどっか女ん所に泊まってた日にだってな! うわー泣ける。このキングオブ馬鹿!!」

 一体この短時間で何回ほど馬鹿と言われただろうか。
 くっ、と泣き真似をしている新岳を放って凌は回数を数えた。
 そうやって思考を意図的にずらそうとして、何でそんな事しなきゃいけないと自問する。




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