君が一番甘い

「わあー…
美味しそう！
これ、本当にくれるの？」

彼女はそう言ってケーキをじっと見つめた。本当、女は何でケーキやら甘い物が好きなのだろうか。オレには理解出来ない。

「ん、早く食えよ」

「ありがとう、いただきまーす」

彼女はそう言うとケーキを食べ始めた。ケーキを食べれて嬉しかったのか彼女は笑顔だった。

てかケーキ一個くらいであんなに喜ぶなんてバカだろ。
…ホント可愛いヤツ。

「なあ、美味しい？」

「うん。スゴく美味しい！」

「しし、なら良かった」

「ベルは食べないの？」

「ん、腹減ってねーから」

「そっか」

そう言うと彼女はオレの方をじっと見つめた。

「………なんだよ」

「あ、いや…その」

「はあ？言いたいことあるなら、はっきり言えよ」

「…なんか私だけ食べちゃって悪いなぁって思って」

「んなこと気にしなくてもいーのに」

お前が嬉しそうにケーキ食うの見てるの王子は好きだぜ…なんてことは流石に言わなかった。

「…ベルって優しいよね」

「ししっ、どこがだよ」

「ぜーんぶ」

彼女はそう言うと、ふふっと笑った。

「……っ
いーからさっさと食えよ」

「うん」

オレは彼女に弱いのかも知れない…
彼女が笑ってくれるだけで幸せとかオレらしくないってのはわかってるけど
今、スゲー幸せ。

「なあ、やっぱり一口ちょーだい」

「うん。いいよ
はい、あーん」

「ん…」

甘い…つーか甘すぎだろ、このケーキ。よく彼女は美味しい美味しい言いながら食えたな。女ってスゲー。

「どう？美味しいでしょ？」

「まあまあ」

「ふふ…ベルらしい感想だね」

「どーゆー意味だよ」

「そのままの意味だよ」

「はあ？」

「あ、ベル…もう一口食べる？」

「もういらね」

オレがそう言うと彼女は「そう言うと思った」と言って笑った。
オレはそんな彼女がいとおしくて気がついたら抱き締めていた。

「ベル？」

彼女は驚いた顔をしてオレを見つめていた。あー…もう可愛すぎだろ、オレは心の中でそう呟くと優しく彼女に口づけをした。

「ししし」

ケーキも甘かったけどやっぱり彼女の方が甘い。