貴方が生まれた日 | ナノ


 
「あ、お誕生日おめでとう」

私は12時を過ぎたのを確認するとそう言った。
彼はと言うとベッドで寝転んでゲームをしていた。
まあ、私もだけど。

「あー…今日だっけ」


「うん」

「そっか」

「嬉しくない?」

「別にどーでも良いっつーか」

彼らしいと言えば彼らしいのかもしれない。

二人しかいないこの部屋に互いに違うゲームのBGMが鳴り響く。
あ、彼は今ラスボスを倒してるのか。
私はまだそこまで進めてないのに。

「お祝い、今年はどうする?」

「適当でいいんじゃね」

「わかった
ベル、ラスボス強い?」

「まあまあ」

「ふーん」

彼は指を器用に動かしながら操作をする。
私には真似できないスピードだ。

「しし、楽勝でクリアしたぜ」

「え?嘘、早くない」

「だってオレ王子だもん」

「あー…また私の負け?」

「ししし、当たり前だろ」

「…ケーキ独り占めしてやる」


私はそう言うと冷蔵庫に向かいケーキを取り出した。

「いつの間に冷蔵庫にケーキなんか入れたんだよ」

「昨日」

「一人で食えんのかよ?」

「知らない」


「ばっかじゃねーの?」

「…わかった、あげるよ」

「最初からオレのために買ってた癖に」

「半分こで良い?」

「別にどーでもいい」


私はナイフでケーキを二等分にしてお皿に置くとベルにケーキを差し出した。

「はい」

「げっ、マジで二等分したのかよ」

「当たり前でしょう
ほら、早く食べて」

「…うわ、夜中にこんなの」


「何、食べられないなら私がもらうよ?」


「うっせーな
こんくらい食えるし」


そう言うとベルはケーキを完食した。



――――

「よく食べれたね」


「だってオレ王子だもん」

「あ、歯磨きちゃんとしてね
また虫歯になって脱走されたらこっちが迷惑なんだから」


「…虫歯になんかなるわけねーだろ」


「いや、なるかもよ?」

「お前うるせーんだよ
いい加減寝ろよ」

「えー
ヤダ。まだ起きてる」

「任務行かない気かよ」

「残念
休みなので任務ありませーん」

「うざっ」


「酷ーい」

「あっそ…
オレ寝るからオヤスミ」

「オヤスミー」

もう寝る時間なのか…
とりあえず私はクリアするまで寝ないようにしなきゃな。

「あ、いい忘れた」

「なにー?」



「祝ってくれてありがとな」


「…っ」

不意討ちだった。
まさかあのベルがお礼を言うなんて…。

とりあえず私はこの緩む口元をどうするか考えなければいけない。

ありがとうなんて珍しいじゃない。
馬鹿ベル。


来年も祝ってやるからね…

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