プレゼント | ナノ


 
「お、おはようございます」

「はよ
最近よく会うな」

「ほ、本当奇遇ですね」

奇遇なんかじゃない私はわざわざ先輩に会うためにこの時間帯にした。

「先輩、今日誕生日なんですよね
おめでとうございます」

「あ、さんきゅ♪
覚えてくれてたんだ」

「たまたまですけど…」

違う。たまたまなんかじゃない。
ずっと覚えてた。
来年には先輩がいないから。
今年が最後チャンスだと思った。
ずっと渡したかったプレゼント。
今日こそ渡すんだ。

カバンの中に入っている手作りのマフラーを。


「お前さ」

「はい」

「好きなやつとかいんの?」

「…えっと」

先輩です。なんて言えない。言ったら引かれるに決まってる。

「無理に答えなくてもいいぜ
まあ、その慌てようじゃいるみたいだな」

「あ…」

先輩は、しししっと笑うと私の頭を撫でた。
先輩にとって私はただの後輩なんだろう。


「先輩はいるんですか…」

「ん」


「好きな人…」

「いたらどう思う?」

「…意外だなぁと」


「ふーん」


「やっぱりいるんですか?」

「一応な」

「そうなんですか…」

失恋確定。
わかりきってたことだけどやっぱり辛い。

でも先輩の前では泣けない。

「へぇ…そうなんですか
私、応援しますね!」

精一杯の笑顔を見せなきゃ…
私はカバンをぎゅっと握ると笑って見せた。

「…」

「どうかしました」

「別に」

あれ、私…
余計なこと言っちゃった?

「あ、きっと先輩好きな人に誕生日祝ってもらえますよ」

「…」

「先輩…?」

「オレ、先に行くから」

「せ、先輩…っ」

どうしよう。
嫌われちゃった?
わからない、わからないよ。
私が何かしたの?

答えてよ、先輩。

胸がぎゅっと締め付けられたように苦しくなった。

「先輩!!」


「!?」

私が急に大声を出したせいか先輩は驚いて振り向いた。

「私、先輩が好きです」

どうせ嫌われるなら。
今、言ってやる。

「最近朝よく会っていたのだって
奇遇なんかじゃなくて
私がわざわざ先輩に会う時間帯に登校していただけです
先輩に会いたくて」



「わかったわかったから泣くな」

「…優しくしないでください」

私は先輩を睨みつけた。
だって中途半端な優しさなんていらないから。
優しくされて辛くなるのは私だけ。


「お前、勘違いしてるから」

「何をですか」

「オレもお前が好きだから」

「嘘なんか言わないでください」

「ホントだっつーの
人の話聞け」


「…」

「オレはお前が好き
一年前からずっとな
わかった?」


「…信じられません」


急にそんなこと言われたって信じることなんかできない。
一年前からとか嘘でしょう?

「信じろよ」

「…っ
だってさっき私に対して」

「さっきはイライラしてて」

「何でイライラしたんですか?」

「お前が応援するとか言うから」


あ…そういえば
そんなこと無理して言った。



「わかりました
私、信じてみます
先輩のこと」


「ししし
じゃあさ、オレもお前を信じても良い?」

「はい」

「カバンの中に入っているであろうプレゼントをオレにやるのをさ」


「き、気づいてたんですか」

「だってオレ王子だし」

あぁ、と思わず納得しそうになってしまった自分が少し怖くなった。


「じゃあ…どうぞ、先輩」


「ありがと
なあ、お前今日暇?」

「えっと暇です」

「じゃあ…授業終わったらオレんとこ来いよ
じゃあな」


私の肩をポンポンと叩くと先輩は小走りで去っていった。

でも本当にプレゼント渡せてよかったなぁ。

とりあえず私は来年もお祝いできるよう神様にお願いしてみる。

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