「か、返してください」
「ヤだね、返して欲しかったら自分でとれよ」
先輩はそう言うとわざと私の背では届かないところに置いた。
私はいつも彼にいじめられてる。
先輩は遊びのつもりなんだろうけど私は正直嫌だ。
ぴょんっと私はジャンブした。
どんなに背伸びをしても手を伸ばしても届かない。
あと少し。
私の背が高かったら…
そう思うと泣けてきた。
すごく悔しくて。
「…先輩」
「あ?」
「なんで私に意地悪するんですか…っ
私がチビだからですか?
私が弱虫だからですか?
私が……私が、先輩に告白したからですか?」
そう、私は1ヶ月前に先輩に告白をした。
当然、返事はもらえなかった。
正直期待もしてなかったし、これから先、先輩が返事をくれることなど無いだろうと思い私は先輩のことを諦めることにした。
先輩に告白した同僚も何人かいたし。皆、先輩からフラれていた。でも先輩は私にだけちょっかいを出してくる。
どうしてだろう?
なんで私にだけ意地悪するの。
私の思いは爆発した。
「…そんな風に思ってたんだ、お前」
「じゃあどう解釈するればいいんですか?
今日だって先輩は私の大切なカチューシャ奪って高いところに置いて
先輩は私が必死になってる姿が見たいからそうしたんでしょう?」
最低です!と私が叫ぶと先輩は少し驚いていたようだった。
「あのさ」
「なんですか?」
「そんなに嫌だった?」
「はい。とても」
「…ごめん」
え…?今、先輩謝った?
「なんで謝るんですか…」
「オレ、じゃれていたつもりなんだけど」
「え…」
「お前が告白してくれて嬉しかったから
でも、お前がオレを避け始めたから
オレ退屈だったし
かまってほしかったし」
「じゃあ…」
「もう意地悪しねーから安心しろよ」
「先輩…」
先輩は私の頭を撫でるとカチューシャを返してくれた。
「にしても…そのカチューシャそんなに大切な物だったんだ?
しししっ
もうこれからは目が赤くなるまで泣くなよ」
「はい…」
先輩は泣いている私を抱き寄せた。
カチューシャ?宝物に決まってるじゃないですか。
だって貴方が珍しく私にくれたプレゼントだったのだから。
弱虫うさぎが
泣くのをやめた日
それは両思いだったと知った日。