出会いは突然で | ナノ




「撮れた」

思わず笑みがこぼれた。

これで私は一躍有名になれる。

私は、所謂パパラッチと呼ばれる仕事をしている。
今日はたまたま政治家の違法な取引現場を目撃し、その瞬間をカメラで捉えた。
神は私に褒美を与えてくれたと、この日の私はそう思っていた。



―――

「はぁ…はぁ」

私は今追われている。
あの写真のせいで。
ヤバい写真だとわかっていた。
でも私は金が欲しかった。
笑えちゃうわ、金より大切な物を失いそうなんだからね……

ずっと走っていたせいか息切れしてしまう。
でも今は逃げなきゃ。
安全な場所――としか私の頭にはなかった。


何とか細い裏道に入り巻いた…
と思ったその瞬間。

何かが頬を掠めた。

「!」

「オジョーサン
追われてるならオレと一緒に逃げない?」

「はい?」

「まあ、お前に拒否権なんかねーけど」

「あの」

私の目の前にいる男はニヤリと笑った。


「ししっ、だからあの写真のせいで死ぬのとオレについていって生きるのと
どっちが良い?」

私には拒否権なんかなかった。

「ついていきます」


ただそう静かに言うしかなかったのだ…

「そーいや、自己紹介まだだったよな
オレはベルフェゴール」

「ベルフェゴールってあの?」

「ああ、お前の名前は知ってるよ
こっちの世界でも有名だし」

「あ、はあ…」

そりゃあんな写真撮ったしね。

「怖いもの知らずな小娘が大胆な事したってな」

「…いや、金が欲しかったんでつい」

「で、金に目が眩んで命を落としそうになったんだからお笑いだよな」

「そこまで言わないでください
もう後悔してる過去の事なんで」

「うしし」

「あの、今さら何ですがベルフェゴールさん
何で私を助けたんですか」

「ん?暇潰しに決まってんじゃん!」

「はあ…」

「ま、殺しはしねーから安心しろ」

「…」

「あ、ヤベ
おい、そろそろ戻んねーとボスに怒られる」

「戻るって?」


「オレらのアジト」

そんな簡単に言わないで欲しかった

「あの、私も行っても平気なんですか」

「ん。あー多分な」

「多分?」

「冗談、冗談
だいじょーぶだよ
あ、最後にもういっぺん聞くぜ
お前オレについて行く?
今なら逃げ出しても良いけど」

逃げ出す?どこへ?
最初から選択肢は一つしかないじゃない。


「ついていきます」


「りょーかい」

こうして私とベルフェゴールの奇妙な共同生活が始まる。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -