私は、ヴァリアーに入隊したばかりだ。
スクアーロ様の部下として働いている。
最初、スクアーロ様は私の名前すら覚えていなかったのだが私がしつこく毎日話しかけたおかげでなんとか名前を覚えてもらった。
「スクアーロ様、遊びに来ました」
今日は暇なのでスクアーロ様の部屋に遊びに行こうと思い、急いで部屋に向かうとドアをノックした。ノックするとスクアーロ様が慌てドアを開けた。
「また、お前かぁ…」
「はい」
「用がないのにいちいち来るんじゃねぇって言ってんだろぉ!!」
「いいじゃないですか」
スクアーロ様は慌てドアを閉めようとするがもう遅い私は無理やり部屋に入った。
「よくねぇ
今すぐ出ていけぇ」
「任務が無いから退屈なんです」
「オレは忙しいんだぁ」
「忙しそうに見えませんが?」
「う゛お゛ぉい!!お前しつけぇぞぉ!」
「あ、良ければ一緒にお茶しませんか?」
「…お前に負けた
もう勝手にしろぉ」
「ありがとうございます」
スクアーロ様は、優しいと思う。本当に私が嫌なら今頃切り刻んでいるだろう。
「う゛お゛ぉい…オレはこの間の任務の始末書を整理するからお前は適当に寛いでいろぉ」
忙しいのは本当だったんだ。なのに私は…
「あの、何かお手伝いすることはありませんか?」
「今のところは大丈夫だぁ
お前は座っていろ」
そう言うとスクアーロ様は私の頭を二、三回撫でた。
「はい」
私はただスクアーロ様を見ていることしかできなかった。
――――
「終わったぜぇ」
「お疲れ様でした
あ、よかったら」
私はコーヒーをスクアーロ様に手渡した。
「う゛ぉ゛ぃ…気をつかわせちまったなぁ」
「無理やり部屋に押し掛けてしまってすみませんでした」
「もう気にしちゃいねぇから安心しろぉ」
「でも」
「この話はもう終わりだぁ
そういえばこの間の任務はお前頑張ってたなぁ」
「え?見てたんですか…」
「たまたま見えただけだぁ」
恥ずかしい、見られていただなんて。
「あの、コーヒーおかわりいかがですか?」
「う゛お゛ぉい!!まだ一口しか飲んでねぇぞぉ」
「あ、そうですか…そうですよね」
「お前大丈夫かぁ?
顔が少し赤くねぇかぁ」
そう言ってスクアーロ様は私の頬を触った。
「…っ
赤くないですよ」
「そうかぁ?」
「わ、私そろそろ帰ります」
「あ、ちょっと待てぇ」
スクアーロ様は私の腕をつかんだ。
「私、ご迷惑になりますし」
「う゛お゛ぉい…迷惑じゃねぇからここにいろぉ
たまにはゆっくりお前と話してみてぇんだぁ」
「私とですか…
何か訊きたいことでも?」
「名前ぐれぇしかお前のこと知らねぇからお前のことを教えてほしいんだがダメかぁ?」
「ダメじゃないです」
スクアーロ様からそんな言葉が出るなんて思ってもみなかった。
…それから私は自分のことを色々とスクアーロ様に教えた。
―――――
「つまんなかったですよね」
「そんなことねぇ」
「そうですか?」
「あ゛ぁ
…オレはお前のこと」
「ス、スクアーロ様…?」
スクアーロ様は私の頬に手をやると私の目をじっと見つめた。
「キスしてもいいかぁ?」
スクアーロ様の問いかけに私は無言で頷いた、その時だった。
ガタッと音がしてコーヒーカップが倒れたのは。
私は運が悪いのだろうか?
コーヒーカップにキスを邪魔されるなんて…
倒れたコーヒーカップを直すため私が目を開けたらスクアーロ様と目があって二人で笑った。
これはこれで幸せなのかもしれない。