1mルール | ナノ
 


目が覚めるとそこはベッドの上だった。
ああ、私、油断して刺されたんだった。
生きてるってことはそこまで深く刺されなかったのか…


それにしても私って本当にバカだなぁ。
私がそう思いながら天井を見つめた瞬間カーテンが開いた。

「あー本当に怪我したんですねー」

「フラン!?」

「何驚いてるんですかー…
あ、起き上がらないでください
傷口開きますよー」

「な、何でフランが」

「来ちゃダメでしたかー?」

「ダメじゃないけど」


フランと話すのはすごく久しぶりな気がする。
あんなことがあったし…

「ミー、あんたに謝らないと思って」

「え?」

「あの告白嘘でしたー」

「…え?」

嘘ってどういうこと?


「イライラしてつい」

「ついじゃないよ!私がどれだけ悩んだか」


私が怒るとフランはまあまあと私を宥めた。
ったく…


「せっかくあんたに教えてあげようと思っていたことあるんですけど、やっぱりやめときますー」

「は?」


「カレンダー見ておいた方がいいですよー?
じゃあミーこれから任務なんで」


「あ、待ってフラン…」

フランは私を無視してこの部屋から出ていってしまった。もっと話したかったのに…
それにしてもカレンダーって今日は12月22日、別に普通じゃ……ない。
忘れてた。今日は先輩の誕生日だった…
あーっ!プレゼント結局クローゼットに放置してた。
私のバカ…これじゃ台無しじゃない。
私が落ち込んでいるとまたカーテンが開いた。

「今度は誰ですか?」

私がめんどくさそうに言って起き上がろうとしてカーテンが開いた先を見ると先輩がいた。
私が驚いた声を出すと先輩は不思議そうな顔をしていた。

「カエルから何も聞いてねーの?」

「え?何のことですか?」

「後で見舞いに行くって」


フランめ…教えないってこの事だったのか。
できれば教えて欲しかった…心の準備が出来てない。


「昨日は本当にすみませんでした…」

「謝んのは、もーいいって昨日言っただろ?」

「?
私、昨日のことあんまり覚えてないんです」

「そりゃあ…そうだよな
お前オレが駆けつけたらすぐ意識失うし」
「あ、でも声聴こえたのはなんとなく記憶に残ってますよ」


「別に気にしちゃいねーよ
…てかオレ、スゲーお前のこと心配したんだけど」

「本当ですか?」

「…お前が死ぬかもって思うとなんか嫌だった

ほら、最初はお前のこと嫌いだったけど最近はわりと仲良かったし」


「先輩、心配かけてすみません」

自分が嫌になった先輩に心配ばっかかけて。昨日任務でミスったのは自分がいけないのに。

「だから謝るなって」

「私、昨日の任務集中してなかったです
私、油断してました」


私がぽつりぽつり話し出すと先輩は黙って聞いてくれた。


「最初標的を殺すのが嫌でした。前に標的が先輩と仲良く歩いていたのを見たことがあって標的を殺したら先輩になんて思われるんだろうって怖くなって…」

私は本音をぶちまけた。もう、どう思われたって良い。隠すのは疲れた。

「無理して話さなくてもいーから。またお前泣いてるし、もうこの話はヤメな」

先輩に言われて涙がこぼれ落ちていたことに気づいた。つくづく私はバカだ。

「…先輩」


「今日、オレの誕生日なんだけどさ。プレゼントとかは別にいらねーから二つだけ願いきいてくんねー?」

「…私ができる範囲のことなら何でもしますよ」

私がそう言うと先輩いつものように笑った。

「うしし
今の言葉忘れんなよ?」

「いくら私でも忘れませんよ」


「じゃ、一つめな
新しいルールを決めたいんだけど」
ドクンっと心臓が動いた。ルールというとあのルールを思い出す、1mルールを。またあのルールのようなものを決められてしまったらと思うと胸が締め付けられたように痛い。


「お前は危なっかしいからオレの半径1m以内にはいること…簡単だろ?」

「え?」

思わず聞き返してしまった。だってあまりにも予想外だったから…

「ししっ
今のお前の顔、超傑作なんだけど」

「だって先輩が」

「あ、二つめは
その先輩って呼び方やめろ。今日だけでもいーからさ、名前で呼んでくれねぇ?」


「え…名前ですか?」


「あ、勿論呼び捨てで、ダメ?」

ダメじゃない、だけど名前で呼ぶなんて…しかも呼び捨てでなんて緊張する。
私は勇気を振り絞って声を出した。


「…ベ、ベル?」


勇気を出した割にはスゴく小さい声だったから先輩に聴こえたか心配だったが聴こえたようだ。

「なんか変な気分」

「私もです
てか、ズルいです
私だけ名前で呼んで…」

先輩は私を名前で呼んだこと一度もないのに。

「あーわかったよ
呼べばいんだろ?
…サーラ」


普通に呼べば良いのに先輩はわざわざ私の耳元で囁くようにそう言った。
顔が赤くなるのが自分でもわかる。わかるけど止めることはできない。



「すみません、後輩のこんな我が儘きいてもらっちゃって」

「…オレ、ただの後輩にこんなことしねーよ?」

私が言ったことに驚いた様子で先輩はそう言った。
え…でも私ただの後輩じゃないの?


「お前、マジで鈍感だな
オレ、さっきコクったつもりなんだけど」

「え…こ、コクったってい、いつですか?」

私は驚きのあまり声がどもってしまった。

「…さっきのルールん時」

「あれ…告白だったんですか?」

「…普通気づくだろ」

「気づきませんよ
回りくどいですよ!」

「察しろ」

「無理です
察するなんて」

私がそう言うと先輩はまた笑う…それにつられて私も笑ってしまう。
スゴく幸せだ、今まで一番。

「返事は?」


「ルール破れって言われても破りませんからね…
これが私の返事です」

「お前も回りくどいじゃん」

「あわせたんですよ……ベルに」

「しし、そーかよ
じゃ、あわせてくれたお礼にお前に良いことしてやんよ」

そう言うと先輩は私にキスをした。

―今の私と先輩の距離は0。
数秒間だけど先輩を近くに感じられた。

先輩、お誕生日おめでとうございます。




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