今日は気が重い。 こんなに嫌な任務は始めてだ。 私は嫌々ながらもドレスに着替え、化粧をして、髪を整えると、隊長と先輩の元に向かった。 「…着替え終わりました」 「似合ってんじゃん」 「先輩が見立てくれたからですよ」 「お前が髪の毛結ばないなんて珍しくね?」 先輩は私の髪を触った。 「そうですか?」 「ん、でもお前は髪結ばなくても可愛いけど」 先輩にそう言われて私の顔はみるみる赤くなる。なんでこの人はさらっとそんなこと言えるんだろう。 「お前ら、そろそろ行くぞぉ!」 私たちがだらだらと喋っていたせいで隊長に怒られた。 ―――― パーティー会場に着くと私たちは別行動になった。 私は会場をうろうろしながら標的を探した。 あ、見つけた。 標的は楽しそうな顔しながら談笑していた、これから殺されるとも知らないで。 さて、どうやって誘き寄せようか。 私が悩んでいたら、標的がすれ違った。その時標的が持っていたグラスから飲み物が零れ落ち私のドレスに染みを作った。 「あっ、ごめんなさい」 「…大丈夫です」 「でも、染みが残ったら大変よ そうだ、ちょっと来てくれる?」 まさか標的からこっちに来てくれるなんて…これは好都合だ。 にしてもこの女やたらニコニコ笑う、なんか裏がありそうで怖いがとりあえず私は標的についていった。 ―――― 「…本当にごめんなさいね」 「大丈夫ですよ」 パーティー会場に人が皆いるせいか廊下には誰もいなかった、使用人すらも。 「あなた、いくつ?」 「四捨五入すれば20になる年齢です」 「面白いことを言うのね」 「…あの、こっちってバルコニーの方じゃ」 私がそう言うと女の足は止まった。 「…ちょっと夜風に当たらない?」 「え?」 女は私の腕を引っ張るとバルコニーへと出た。 「ほら、綺麗な星空よ」 女は星空に夢中で私の方を見ていない。殺すなら今がチャンスだろうか。私は、こっそりとリングに炎を灯した。 「ねえ」 「…何ですか?」 「あなた…殺気消すの下手ね」 女はそう言うと私の腹部を切り裂いた。 「ぐ…っ」 油断してた。この女は例の犯人だったのに… 「やっぱり若い子は良いわ…」 女はそう言うとナイフに付着した血を舐めた。ムカつく… 薄れ行く意識の中、私は匣を開匣すると女を殺した。とりあえず任務は遂行できた。 私は腹部を押さえ倒れこんだ。ここで死ねるならそれはそれで良いのかもなど考えてしまった私は暗殺部隊として失格だ。 隊長、最期まで迷惑かけてすみません。 先輩、ダメダメな後輩ですみません。 最期は貴方の隣に居たかったんですけど私には叶わない夢でした。 私が静かに目を閉じようとした瞬間声が聴こえた。 この声は… 「…っ、お前なにしてんだよ」 「せ、んぱい?」 「何やられてんだよ」 「…すみません」 「謝んのは後でいいから喋んな、バカ」 「せんぱい…わたしせんぱいのこと……―――」 「おい…しっかりしろよ?」 私はもう先輩の声が聴こえなくなった。 |