1mルール | ナノ
 


昨日のことがいまだに信じられなくて私は部屋に閉じ籠っている。
先輩、彼女じゃないって言ったのに…嘘を吐かれたことが一番ショックだった。
私がため息をつき、涙を拭こうとした瞬間ヤツは私の部屋のドアを壊した。

「ちょっとあんたいつまで部屋から出ない気ですかー?」

「フ、フラン!?」

「あんたが生きてるか心配で駆けつけてきましたー」

「いや、死なないから…」

「……ちっ
心配して損しましたー」

「用がないなら出てって」

私はフランを無理やり追い出そうとした。今日は一人になる時間がほしいからだ。

「ミーが出ていったらあんたまた一人で泣きじゃくるでしょー?」

「泣かないよ…」

「強がり言ったって自分が傷つくだけですよー
あんた先輩に女がいるって初めて知って落ち込んでるんですよねー?」

「違う…初めてじゃない。私は先輩があの人と前に歩いてるの見たから」

「…そうですかー」

私の横に座ると、
フランは黙り込んでしまった。

「先輩にね
前にそのこと訊いたら、彼女じゃないって言ってたから…なんか嘘吐かれたって思ったら悲しくなっただけ」


「…そういうことだったんですかー」

「…私、無理なのかな?」

「…」

「このままじゃ、先輩のことを嫌いになっちゃうよ」

「あんなやつ嫌いになればいいんですよー」


「フラン…」

「まだ気づかないんですかー?
ミーはあんたが好きなんですよー」

その一言にズキリと心臓が痛くなった。嬉しいよりも悲しくなった、だって友達だと思ってたのに。


「ごめん。私…」

「…泣かないでくださいよー
じゃ、ミーはこれから任務なんで」


そういうとフランは私の部屋から出ていった。私はフランの背中を見てることしかできなかった。数秒後、私は冷静になり部屋から出た、フランを追うために。


「…いない」

そんな、いくら私が数秒間動けなかったとしてもこんな早く…

「なーにやってんだ?
こんなとこで」

「先輩、何でここに」

「お前の部屋からカエルが出ていくの見て…
ってお前泣いてる?」

「あ……な、泣いてません」

「へぇ…じゃあ、これは?」

先輩はそういうと私の頬を伝う涙を指ですくった。

「あ…」

「しし、まさかカエルに泣かされた?」

「違うんです…あ、これはその」


「ま、無理に言わなくても、いーけどさ
何かあったら言えよ」

「はい」

「お前はオレの後輩なんだから」

“後輩”か…。
やっぱり先輩の中の私はただの後輩なんだ。


「あの、」

「ん?」

「……先輩
好きな人いるんですか?」

「気になってるヤツならいるけど」

ああ、だから彼女じゃないって言ったんだ。
片思いだからそう言ったんだ。
先輩は嘘つきじゃなかったんだ。

「どんな人なんですか?」

「喜怒哀楽が激しくてかなりの馬鹿…とにかく見てて面白いヤツ」

「そうなんですか…」

私の馬鹿。そんなこと訊いて傷つくのわかっていたはずなのに。

「お前最近おかしくねぇ?」


「いえ、何でもないです
あ…私、用があるんで
先輩、また今度ゆっくり話しましょう」


「はあ?ちょっと待てよ」

先輩を無視して私は走り去った。
ごめんなさい、先輩。



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