短編 | ナノ

ガラスの靴を履いていた少女はお姫様になった。
お姫様は可愛くて…みんなから愛されているの。
どんなに辛い出来事があっても少女は辛い事を乗り越えて王子様と結ばれお姫様になった。
羨ましいな。
…可愛くない私はお姫様に絶対なれないから。


「ベル」

「ん?」

「また、あの子とお喋りしてたの?」

「しし、お喋りしちゃ悪いかよ」

「別に悪くないよ…ただ仲が良いんだなって思っただけ」

「まあな」

ベルは、そう言うと笑った。
あの子とは、最近幹部になったばかりの可愛いらしい子。
私たちの後輩。
最近、ベルとあの子の仲はものすごく良い、まわりから付き合ってるんじゃないかと噂されているぐらい。
…本当、ズルいよ。あの子ばっかり。

「へぇー
もしかしてベルはあの子が好きなの?」

「はあ?」

「だっていつもお喋りしてるじゃない」

「…オレといつも喋ってんのはお前もだろ」

「最近は、あまり喋ってないじゃない」

「お前もしかしてヤキモチ妬いてんの?」

「違っ」

図星だった。私はあの子にヤキモチを妬いていた。だってズルいじゃない。
ベルとお喋りしていいのは、私だけだったのに。

「違くねーだろ」

そう言うとベルは私の頭を優しくポンポンと叩いた。

「…ベルの馬鹿」

「あ?」

「優しくしないでよ」


諦めることができないじゃない。
好きで好きで仕方がなくて…
でも私なんかがベルと釣り合うわけないから。

「今日のお前なんかおかしくね?」

「おかしくないっ!」

つい怒鳴ってしまった。ベルは驚いた顔してる。

「…悪ィ」

違うの、悪いのは私なの。ベルじゃないよ、そう言いたかった。でも…

「あ、ベル先輩、名前先輩こんなところで何やってるんですか?」

あの子が突然現れた。
何で…?せっかくベルと二人きりでお喋りしてたのに。神様は本当残酷だわ。

「ん、暇だからちょっと名前とお喋りしてた」

「そうなんですか…」

あの子は私のことをチラッと見た。
何よ?…私がベルとお喋りしちゃいけないとでも?

「名前先輩…私、ベル先輩と二人きりで話したいことがあるんで席をはずしてもらえませんか?」

「…別に良いけど
じゃあ、またね…ベル」

私がそう言った瞬間あの子は笑みを浮かべていた。
どーせ、告白でもするんでしょう?あの子は可愛いからきっとベルはOKするんだ。
あの子は可愛くて狡くて見てるだけで苛々する。童話のお姫様みたいに。

でも本当は私だってお姫様になりたかった
可愛くて、狡いのに、王子様から愛されるお姫様に。

何か泣きたくなってきた。
大嫌い、あの子もベルも…自分も。全部全部大嫌い。
ベルの馬鹿。
私は貴方が大好きなの。

私は部屋に閉じ籠ると思い切り泣いた。



――――――


任務行く時間になったので部屋から出た。
その時だった。あの子とベルが付き合い始めたと他の人たちが話しているのを聞いてしまったのは。
思わず立ち止まってしまった。
あぁ…やっぱり告白したんだ。
わかっていたけど辛い。
私は、暗い気持ちになったが任務に行くため歩き始めた。
あ、そうだ。
…今日の任務はベルと組むんだった。
最悪。私はつくづく、ついていない。


「お前何やってたんだよ
王子を待たせると有り得ねーし」

「ごめん……あのさ、ベル」

「ん?」

「久しぶりだね。ベルと任務するなんて」

「そーいや…そうだな」

「…ベル」
「ん?」

「あの子と付き合い始めたんだって?おめでとう」

「ん、まあな
…お前は、どう思った?」

「え?」

「オレがあいつと付き合い始めたって聞いてどう思った?」

「どうって…
良かったなぁって」

「マジで?」

「…何でそんなこと聞くの?」

「だってお前悲しそうな顔してるし」

そう言ってベルは私の頭を撫でた。
何でそんなことするの?
優しくしないで欲しかった。

「好き」

「…」

「私、ベルが好きなの」

私がそう言うと彼はいきなり私を抱き締めた。

「泣くなよ
あー…オレ、お前に泣かれると困るんだけど」

「ごめん」

「…オレさ
お前のこと好きだった」

「私も、ベルのこと好きだったよ」

全部過去形にしてしまおう。
その方が楽だから。

だから、もう泣くのはやめよう。ベルが困るだけだから。

私は気持ちを殺してベルに微笑んだ。
だから、お願い。
ベルまで悲しい顔しないで。