私の一番近くに居て、
私の一番大切で、 私の大好きな人の誕生日。 だから私は今日貴方にプロポーズをしようと思います。 「名前」 「なに?」 寝室で寝ていたはずの彼が突然私の居る台所にやってきて私は驚いた。 「今、何時?」 「朝の7時。昨日あんまり寝てないんだからまだ寝てていいよ」 「ん…」 彼はまだ眠たそうに欠伸をして、また寝室へと戻っていった。足元が覚束ないのか少しフラフラしていて心配したが無事にベッドに辿り着いたようだ。 心配で様子を見に来たのだが安心した。彼はすやすやと寝息をたてていた。彼は昨日長期任務から帰ってきたばかりなのに、帰ってきてすぐ私に会いに来るなんて。嬉しいけど疲れているのだから少し休んで欲しいな。 偶然か、必然か、わからないが今日は彼の誕生日である。まだおめでとう、なんて祝いの言葉は言えてない。 彼が起きたらすぐお祝いできるように、と私は先程まで台所で料理を作っていたのだが… この様子じゃ、あと二、三時間は寝ていることだろう。 早く起きて欲しいな、伝えたいことがたくさんある。 彼と私は付き合ってもう十年。そろそろ私も結婚したい年頃になってきた。この間なんか、毒舌で生意気な後輩から「そろそろ結婚でもしたらどうですかー?」なんて言われた。 なのに、彼はプロポーズをなかなかしてくれない。まあ、彼がプロポーズをするところなんか想像出来ないが… だから私は彼の誕生日に私からプロポーズしようと決めたのだ。 「ベル…」 名前を呼んでも私の愛しい人は起きる気配無し。私も、少し寝ようかな…。 ―――――― 「名前」 「…ベ、ル?」 「おはよ」 「ん、おはよ…」 「お腹すいた」 「あ、ご飯はもう出来てるよ」 私は欠伸をすると、急いで起き上がった。ヤバい、ぐっすり寝過ぎてしまった。 「名前」 「へ?ちょっと待って 今すぐ、ご飯温めるから」 私は慌てながらエプロンを付け、コンロの火をつけた。 「名前」 「だから、ちょっと待…っ」 後ろから、ぎゅっと抱き締められた。私は驚いて手に持っていた、おたまを落としそうになった。 「名前」 「ベル…」 私の耳元で、そっと囁くように彼は喋る。 「今日オレの誕生日なんだけど」 「知ってる」 「プレゼントちょーだい」 「ちょっと待ってて、ご飯温め終わったらあげるから」 プレゼントは勿論用意している。彼が好きそうなブランドのネックレス。見つからないようにクローゼットの奥に隠してある。 「物なんかいらねぇ」 「へ?」 「名前をちょーだい」 ガシャン、先程は落とさなかった おたまが今度は落ちた。 「今、なんて…」 「名前の人生、オレにちょーだい」 嘘、だよね? どうしよう、嬉しくて泣きそう。 「それは、プロポーズ?」 「…ばーか そうじゃなかったら、何だよ」 「ベル」 「ん?」 「私なんかで、よかったら貰ってやってください」 頑張って堪えていたが、もう我慢出来ず涙が溢れ出した。 「泣くなって」 「だって、嬉しい…」 「名前」「なに?」 「愛してる」 「私も」 私からプロポーズしようとしてたのに、まさか彼からしてもらえるなんて嬉しすぎる。 ああ、今ものすごく 私、幸せだ。 わたし+キミ=幸せ ずっと、ずっと大好きだよ。 |