短編 | ナノ

学パロ





「…遅くなって、ごめん!」

私は彼に頭を下げた。今日は一緒に帰ろうと前々から約束していたのに…急に用事が出来てしまい私は約束の時間より数十分遅れてしまったのだ。なのに彼は怒らなかった。寧ろ笑いながら「おせーよ」と言って私の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「ベル……」

「あ、もう謝るのは無しな?
だってお前が遅れるとか余程の事があったんだろ?」

「委員会の仕事あったの忘れてて……ごめんね」


完全に私が悪い。委員会の仕事があったのを忘れて、ああもう私ったら何やってんだろ。彼だって態度に出さないだけで本当は怒ってるよね。こんなんじゃ嫌われちゃう。

「謝るのは無しって言ったろ、ばーか」

「でも、」

「あー…こんなとこでダラダラ話しててもしかねーし
そろそろ帰ろーぜ」

そう言うと彼は歩き出した、しかも私の腕をつかみながら。

「ベル…っ」

「んー?」

「せっかくだし…手、繋がない?」

「ししっ、そーだな。繋ぐか」

彼の手が私の手に触れた。ゆっくりと私達は指を絡めた。所謂恋人繋ぎ。私が前に駄々をこねて恋人繋ぎをしたいと言ってから、彼と手を繋ぐときは恋人繋ぎだ。
彼はなんだかんだ言って優しいと思う。私の自慢の恋人だ。

手を繋ぎながら、校門から出た。下校している生徒は私達くらいしか見当たらない。きっと三十分前なら下校する生徒で校門の周りがいっぱいだったはずだ。

「ベルと帰るの久しぶりで嬉しい」

嬉しさのあまり私は、ついつい
そんなことをボソッと呟いてしまった。


「オレも」

彼から返ってきた返事は意外なもので私はとても嬉しかった。ああ、今凄く幸せだなぁ。

「ベル!」

「あ、コンビニ寄ろーぜ」

「うん」


コンビニに入ると、このお菓子新発売なんだ…とかこのお菓子美味しいってクラスの子が言ってたよ。なんて会話をしながら店内を適当にぐるぐると見た。

「…お前なんか買う?」

「えーと…ピザまん買おうかな。いや、やっぱり肉まん…」

ちなみにさっき財布の中を確認したら152円しか入ってなかったので一つしか買えない。両方欲しかったが仕方ない。

「じゃあ、オレが肉まん買うからさ
お前はピザまん買って」

「半分こするの?」

「あったりー」

そう言いながら彼はニィと笑ったので私もつられて笑った。


――――


コンビニで買い物をして、また私達は歩き出した。

「はい!」

「ん…」

ただ歩いてるわけではない。さっき買った肉まんとピザまんを半分こにしたのを食べながら歩いてるのだ。


「あったかい…」

「お前、今すげー幸せそうな顔してるんだけど」

「あ、わかる?」

何気無い会話とか

ただこうやって一緒に帰れるのとか

彼が隣にいて笑っていてくれているのが
私にとって幸せで。


「バレバレだっつーの」

「あー、でもベルだって幸せそうな顔してるじゃん」

いつまでも、いつまでも
この幸せが続けばいいな、とか思ってしまうんだ。

「仕方ねーだろ。幸せなんだから」

「私だって」


彼の隣にずっと居たい。
これから何年先もずっと彼の隣に居たい。彼の隣で彼と一緒に笑っていたい。




「あーあ、帰りたくないなぁ」

私がポツリと呟く。

「オレも」

すると彼は少し笑いながらそう言った。

「少し遊んでから帰ろうか?」

「さんせー」

私が提案すると彼は私の頭をくしゃっと撫でたので私もお返しに、と彼の頭を撫でてやったら彼が笑ったので私も一緒に笑った。こんなこと女の私が言うことじゃないけど…ああ、もう大好きだ!帰したくない!




とある冬の日の
家に帰りたくなった二人の
帰り道の出来事。