彼と喧嘩して私は久しぶりに街へ出掛けた、小さな靴屋に立ち寄った。別に靴が欲しかったわけじゃない、ただなんとなく立ち寄ってみたくなっただけだった。
私は店内を見渡した、すると綺麗にディスプレイされていた一足の靴に目が止まった。 「…可愛い」 靴は綺麗な赤色でデザインも可愛らしい。私は靴を凄く欲しくなってしまった。でもこんな靴を履いていたらまた彼から子供っぽいと言われるかしら。 彼と喧嘩してしまった原因は些細なことだった。彼が私のことを子供っぽいと言ったのだ。それに私が怒って…それから言い合いになって私は「大嫌い!」と叫んで彼のもとから走り去ったのだ。今頃、彼は心配してくれているだろうか?いや彼は私の心配なんかするような人ではないか。 そう思うと少し悲しくなった。私ばっかり彼のことが好きで、彼に釣り合うようになりたくて一生懸命お洒落して大人っぽい服を着てみたりしてるのに、彼は気づいてくれない。 いつも私の一方通行。 「名前、」 急に名前を呼ばれて肩が強張る。私は恐る恐る後ろを振り返った、すると彼が立っていた。 「ベル…」 「お前が急に部屋を飛び出したから、心配したし…」 「ごめんなさい」 彼が探しに来てくれるなんて思ってなかったので少し嬉しかった。ああ、こんなこと思ってしまう私はなんて酷い女なんだろう。 彼に迷惑かけて、私なにやってんだろう。これじゃあ子供っぽいと言われても仕方がない。 「あのさ、オレ 子供っぽいお前が好きなんだよ」 「え…?」 「だから、その… 無理して大人っぽい格好とかしなくていいし」 え、嘘?本当に? 「オレは、子供っぽい名前が可愛くて すげぇ好きなんだよ」 彼は少し俯きながらそう言った。気のせいかもしれないが彼の頬が赤く染まっていってるような気がした。 「ベル…」 「しししっ さてとそろそろ帰るか」 彼は私の頭をぽんぽんと撫でながらそう言った。 「あ、ベル ちょっと待ってて」 私は彼にそう言うと、先程見ていた赤い靴を買うため店員を呼んだ。 少し子供っぽいかも知れないけど 彼がさっき言ってくれたから…子供っぽい私が好きって。 だから買う決心ができた。 「なあ、」 「なに、ベル?」 「お前、その靴買うの?」 「うん、可愛いでしょ」 「少し子供っぽくねぇ?お前こーゆーの好きだっけ?」 「あはは、なに言ってるのベル… 子供っぽい私が好きなんでしょ?」 私がそう言うと彼は少し呆れた顔をして笑った。 赤い靴 靴を買って店から出ると彼は突然 これからは、もう無理して大人っぽい格好なんかしなくてもいいんだぜ? なんて事を言って私にキスをしてきた。 |