これがオレらの日常、
「ベル」 「ん?」 「退屈なんだけど」 オレの部屋で寛いでいる彼女はそう言いながらオレに寄りかかってきた。 「オレは退屈じゃないけど」 「私は退屈なの」 彼女は少し拗ねた口調でそう言うと腕に抱えていたぬいぐるみをぎゅっと強く抱き締めてきた。 おいおい、ぬいぐるみに八つ当たりするなよ、と言いそうになったがそんなことしちゃう彼女もいとおしくて。 「名前」 「…なーに?」 「オレはお前と一緒に居れるだけで退屈しないけど お前は退屈しちゃうの?」 「そんなこと言うのは狡いよ」 彼女は顔を少し赤らめると恥ずかしそうに俯いた。 「ししし」 「…あーもうベル大好き」 彼女はそんなことを小さい声で言いながらオレに抱きついてきた。恥ずかしいのか顔はまだ俯いたままで。そんなところも愛らしい。 「オレも名前のこと好き」 オレがそう言うと彼女はゆっくりと顔をあげて嬉しそうに微笑んだ。 オレの隣には彼女がいて、彼女の隣にはオレがいる。 きっと、こーゆー何気ない日常が幸せって言うんだろうな。 この日常がいつまでも続くのかわからないけどオレ的には永遠に続けば良いのにって思う。 でもまあオレはかなり危険な仕事してるし、もしかしたら任務中に命を落とすコトもない訳じゃないってのは自覚してる。 だから、さ オレは死ぬまでなるべく彼女と過ごしたいって思うし、死ぬまでたくさん愛の言葉を囁きたいし、死ぬまでたくさん彼女の笑顔をみたい。そーゆー風に思っちゃうんだよね。 「ベル?」 「なに?」 「あ、ベルが珍しくボーッとしてるからどうしたのかと思って」 「ん、そっか」 「何か悩みでもあるの? あるなら私に…」 真剣そうな瞳で彼女はオレを見つめながらそう言った。 「大丈夫 王子が悩みなんてあるわけねーじゃん」 オレはそう言いながら彼女の頭を軽く撫でてから抱き寄せた。 「…ならよかった」 彼女は小さくそう呟いた。 「ん、」 「私ね、死ぬまでずっとベルと一緒に居たいなーって思うんだよね」 「…オレも」 「え?」 「死ぬまでずっとお前と一緒に居たい」 オレがそう言うと彼女は少し泣きそうな顔をしながらオレを見つめた。 「ししし なに泣きそうな顔してんだよ」 「だって、ベルがそんなこと言うなんて」 「王子だってたまにはそーゆーこと言ってみたくなんの」 「…そっか」 彼女は少し納得したようにそう言うとオレの頬を撫でてきた。 「どーした?」 「…ベル、キスして」 「ったく、お前って奴は」 顔を真っ赤にしておねだりする彼女を見て、少しため息をつくと、オレは彼女の頬に軽く手を添えて口づけをした。 ――――― 「…そろそろ行く、から」 満足そうに微笑んでいる彼女にそう伝えた。 「あ、これから任務だっけ?」 「少しかったりーけど、まあ…頑張ってくる」 「そう…気を付けてね 怪我しないようにね」 「ん、わかってるって」 「行ってらっしゃい」 部屋から出ていくオレにそう言いながら彼女は一生懸命手を振っていた。 …少し恥ずかしいんだけど、なんてこと彼女には言えない。 さてと、彼女が心配しないように任務なんかさっさと終わらして帰らねーと。そうだ、アジトに帰ったら真っ先に彼女に会いに行って「ただいま」って言おう。そして彼女から笑顔で「おかえり」って言ってもらおう。 「ししし 待ってろよ、名前」 こんな簡単でつまんねぇな任務なんか早く終わらせるから、さ。 ――――― 「ベルーっ」 「ん、」 「早かったね」 「だってオレ王子だもん」 「あはは… …ベル、おかえりなさい」 「ただいま」 オレらの日常、 何気ない幸せ。 |