コツ、コツと
少し駆け足な足音が後ろから聞こえる。 ああ、彼女だな。と足音ですぐわかった。 「待ちなさい、ベル! はぁ…やっと見つけた」 ほら、彼女だ。 「ん、どーした?」 「どーした?じゃないわよ あんた、また私の部屋に無断で入ったでしょう」 「そんなことで怒ってんの?別にいーじゃん 」 「よくないっ!」 最初の方は大きな声で話していたのが疲れてきたのか彼女の声は徐々に小さくなっていった。 「はいはい じゃあ、オレこれから任務だから」 「あ、ベル 話はまだ終わってな…」 「お前、ウザい オレ任務行くって言ってんじゃん」 彼女はオレの腕を掴んで引き留めようとしたが腕を掴んで離さない彼女の手を振り払った。 「………ごめん」 彼女は少し申し訳なさそうな顔をしながら謝ってきたがオレは無視して任務に出掛けた。 ―――――― 「お願い…っ 命だけは…―――」 「死ねよ」 オレがそう言ってナイフを手に取ると標的の顔が急に青ざめてきた。 命乞いなんて馬鹿みてぇ。 そう思いながらオレは標的をナイフで切りつけた。 今回の任務退屈だった。 …あ、そういえば彼女はどうしているだろう?任務に出掛けるからと無視したけど、彼女は辛そうな顔をして謝っていたのに…少し悪いことをしたかもしれない。 帰ったら謝るか、なんて事を考えながらオレは自分の頬についた返り血を隊服の袖で拭った。 ――――― 「あり?」 オレは約一週間ぶりにアジトに帰ると一番最初に彼女の部屋に向かった。でも彼女はいなかった。 しまった。まさか入れ違いになるとは。 どーしようか悩んでいた時、聞き覚えのある足音が聞こえてきた。 ああ、この足音は彼女の―――― 「ベル…?」 名前を呼ばれたので後ろを振り返ると驚いた顔をしてオレを見つめる彼女がいた。 「ん、なに?」 「なに?じゃなくて 何で私の部屋の前にいるの?てか任務は?帰ってくんのあとまだ先のはずじゃ」 「…あんな任務、一週間あれば終わるし」 「そう…お疲れ様」 「あのさ」 「なに?」 「この間は…」 「別にいいよ…引き留めようとした私が悪かったんだし あ、じゃあ私もう寝るから…」 彼女はそう言って部屋に入ろうとしたのでオレは咄嗟に彼女の腕を掴んでしまった。 「あ、ワリー つい…」 オレがそう言うと彼女はクスクスと笑い出した。 「なに、ベル?」 「…っ あ、いや…」 オレがあたふたしてしてると彼女はまた笑った。 「今日のベルなんか変」 「うるせー… んなこと王子だってわかってるし」 彼女の前だと何故だか調子が狂う。 「あははっ」 「笑うな。お前殺…」 あー…オレなに言ってんだろう。謝るはずだったのに。 「ベル?大丈夫?」 「大丈夫だし」 「…?」 「はぁ…」 オレがため息をつくと彼女はまた笑った。 |