「…ベ、るっ」
「泣くなって」 「だって…」 突然彼女が泣きながらオレの部屋に来た。オレはいつもと違う彼女に戸惑ったがとりあえず彼女を落ち着かせようと一生懸命優しく話しかけた。 「何かあったワケ?」 オレがそう尋ねると彼女は少し肩を震わせながら小さく頷いた。 「んー 何があったか話せる?」 オレは彼女の頭を撫でながらそう言った。 彼女は申し訳なさそうにオレを見ると首を横に振った。 「まあ、オレも無理に話せとはいわねーけどさ…少しくらいは話してくれねーと事情がわからねーし」 「ごめん」 今まで黙っていた彼女が声を発した。 「別に謝らなくてもいいんだけど」 「今は泣いてる理由を話すことは出来ないや… だけど」 「だけど?」 オレが不思議そうにしているといきなり彼女はオレの手を握りながら 「一緒にいて」 と言い出した。 オレは少し笑いながら彼女の手を優しく握り返した。彼女もオレにつられて少し笑った。 「なあ、名前」 「なあに、ベル?」 「言われなくても一緒にいてやんよ」 「ありがとう」 彼女は少し涙を溢しながらオレに微笑んだ。 とても愛くるしいんだけどオレにはその姿が何故か少し儚げに見えた。 「お前泣きすぎ」 オレは彼女の涙を指ですくった。 「今日は少し泣きたい気分なの」 「ししし、なにそれ?」 「女の子には色々あるんだよ」 「ふーん なあ、お前さっきから無理して笑ってねぇ?」 彼女はニコニコと笑っていたけど何か違和感を感じていた。オレには彼女が無理して笑っているように見えた。 「な、何言ってるの?」 「名前…話せるとこまででいーから話してくれね?」 「あはは…ベルには敵わないね いいよ、もう全部話しちゃう だけど一つ約束して」 「約束?別に構わないぜ」 「…私のこと嫌いにならないで」 「…どーゆー意味だよ」 「まあまあ…話を聞いて」 彼女はそう言ってからゆっくりと一回深呼吸をした。心を落ち着かせようと思ったのだろうか?でも彼女の肩はまだ震えてるし今にでも泣き出しそうな顔をしていた。 それなのに彼女はゆっくりゆっくりと話始めた。泣いていた理由の事を――――― 「は?そんなことで泣いてたワケ?」 「そんなことなんかじゃない」 オレが“そんなこと”と言ったから彼女がいきなり怒鳴った。 ちなみに彼女が泣いていた理由はかなり危険な任務をすることになって死ぬのが怖くなったかららしい。 「名前…?」 「私にとっては…一大事なんだよっ」 彼女の声がだんだんと小さくなってゆく… オレ少し言い過ぎたかも。 「ワリー…」 「ベルは私が死んでもいいと思って…」 「んなわけねーだろっ」 死んでもいいなんか思うわけない。彼女に生きて欲しいって思ってる。 「じゃあ…」 「だってその任務、オレもお前と一緒にやることになってるし」 「えっ」 「危ない時はオレが助けてやるし。だからお前は死んだりしねーよ」 オレはそう言いながら彼女の事をぎゅっと抱き締めた。彼女は驚いてオレを見つめている。 もしかして任務を一人でやると勘違いしてた? お前みたいなヤツを一人で危険な任務行かせるわけねーじゃん。 「ベル」 「ん?」 「大好き」 「オレも名前のことだーいすき」 なあ、名前 姫を守るのは王子の役目だろ? だから死なせたりしねーよ。 |