貴方と出会ったのは4月。
私が落とした筆箱を拾ってくれたのが始まり。
あの日から私はずっと貴方を目で追いかけているの。
学年、いや学校中の女の子から貴方はモテモテで私が入り込める隙間なんか有りはしない。悲しいけど貴方と話す機会なんてない。
今日も貴方は格好良い。貴方の、銀色の髪が風に揺れてとても綺麗なの。私は窓の近くにいる貴方をボーっと見ていた。本当、私には見つめるだけの恋がお似合いだわ。
しばらく見つめていると私の視線に気づいたのか貴方は私の方を見てきた。私は驚き、急いで目を逸らした。
どうしよう、胸がすごくドキドキする。私は目をぎゅっと瞑った。貴方に何て思われただろう、そう考えるだけで心臓のスピードがどんどん加速する。
「う゛お゛ぉい!!」
貴方の声が近くで聞こえた気がした。ああ、恋する乙女ってこんなにも恐ろしいものなのか…まさか幻聴が聞こえ始めるなんて私はもう末期だろうか。
「名無 ななし!!」
貴方が私のフルネームを呼んでいるなんてあり得ないことなのに、私の耳には貴方が私を呼ぶ声が聞こえるの可笑しいでしょう?
私がゆっくりと目を開けると、目の前に貴方がいて
…
「やっと目を開けたかぁ…」
「す、すく、スクアーロくんっ!?」
驚いた私は貴方の名前を噛んでしまって上手く言えなかった。あぁ、恥ずかしい…穴があったら入りたい。
「…何か用でしょうか?」
「その…お前、いっつもオレを見てるだろぉ゛?」
こそこそと影から見つめていたことがバレていたと知り、私の頭はパンクした。頭がパンクしたのは普段あまり頭を使わない所為だろう。ああ、どうしたらいいか
わからない。
こんな時は何て返事したら良いのでしょうか?
「ごめんなさい、ごめんなさい、悪気は無かったんです」
私は謝った。ひたすら謝った。そんな私を見て貴方は驚いた顔をしたような気がする。ああ、引かれた。完璧引かれた。私の恋もここまでか、と思った瞬間だった。
「謝らなくてもいい…
それよりお前」
「はいっ?」
「オレのこと嫌いなら
はっきり言え、わかったなぁ!」
「違う、私はスクアーロくんが好きで
それで…あっ」
何言ってるんだろう私は。慌て口を手で押さえたがもう遅い。貴方は全て聞いてしまった。
きっと貴方は呆れているはず、私は恐る恐る貴方の顔を見上げた。
貴方は、顔を真っ赤にして…
「名無 ななし」
「は、はいっ」
「あ、あ、明日屋上に来い!!」
トクン、トクンと私の胸が高鳴る。頬が、かあぁっと熱くなる気がした。
「わかりました」
私がそう言うと貴方は「約束だからなぁ!」と言って去っていってしまった。
ああ、どうしよう
貴方が去っていったというのにドキドキが止まらない。
それにしても見つめるだけの恋がお似合いだった私にこんなチャンスが来るなんて…。
どうしよう、明日
どんな顔して貴方に会えばいいの!