私が正一たちと…彼を、ミルフィオーレを裏切って何日経つだろう?もしかしたら随分時間が過ぎているのかも知れないし、全然時間が経っていないのかも知れない。
ボンゴレアジトに来てから私は気力をなくして…時間感覚がわからなくなった。彼を裏切った罪悪感からだろうか?それとも、ただ自分が何をしていいかわからないからなのか。
そんな私をボンゴレたちは心配してくれたけど、私はつい冷たい態度をとってしまい、ボンゴレたちと仲良くなんて
当分無理そうだ。
「白蘭…」
彼から貰ったリングを私はキツく握りしめた。
私の為にと、彼がリング職人に無理言って作らせたリング。貰った時はとても嬉しかった。
彼に一生ついて行こうと思っていた。だけど、ある日彼の計画の恐ろしさを理解した。私は彼が少し怖くなった。でも私は彼が好きだったから、例え何があろうと彼について行こうと何度も何度も自分に言い聞かせた。
でも無理で…そんな時だった、正一から声をかけられたのは。
一緒にミルフィオーレを、白蘭サンを裏切ってくれないか、と正一から言われた時は驚いたけど私は正一の誘いを承けることにした。
それからすぐだった、私は彼に頼み込んで日本支部に配属させてもらった。
その方が正一と色々話せると思ったし、それに彼の元からいち早く去りたかった。彼の傍にいたら、何もかもバレてしまいそうだったから。せっかくの計画を無駄にしたくなかった。
なのに、彼には最初からバレていたなんて。
“正チャン、ななしチャンやこの古い世界とのお別れ会と
新世界を祝うセレモニーにさ♪”
彼の声が頭から離れない。
ホログラムの彼は私を嘲笑っていた。
――――
いけない、また考え込んでしまった…。私はベッドに腰を掛けると、時計を見た。時計の針は6時39分を示していた。今が、“午前”か“午後”なんて事は時間感覚がわからなくなった私がわかるはずなかった。
私がため息をついたその時だった。部屋のドアがノックされた。
「どうぞ」
「失礼します…あの、お久しぶりです
体調は大丈夫ですか?」
「ええ、おかげさまで…
ところで私に何か用かしら、沢田綱吉」
「あ、はい。その…えっと実は…――――」
6日後に行われるチョイス…彼との決戦に私にもついてきてもらいたい、と沢田綱吉から頼まれた。私には断ることなんて出来なかったので…
「ええ、勿論いいわ…」
「ありがとうございます!…あの」
「まだ何か用かしら?」
「…いえ、ただ
ななしさんが辛そうにしていたから」
「………っ」
沢田綱吉の言葉を聞いて私は驚いた。流石、ボンゴレの超直感ね。顔に出さないようにしていたのに、バレてしまうなんて。
「あ、余計な事言ってすみません」
「謝らなくていいわ…。
沢田綱吉」
「は、はい!」
「6日後、負けないよう頑張りましょう」
―――――
そして6日後。
チョイスバトルの会場に転送された私たちは目を疑った。だって高層ビル群のド真ん中に居たんだもの。
「やあ、ななしチャン
久しぶりだね」
「白蘭……」
久しぶりにあった彼は黒いコート身に纏っていた。
「僕を裏切って後悔してる?」
「誰が後悔なんかするもんですか…っ!」
「相変わらずななしチャンは気が強いなぁ」
笑顔で私に話しかけてくる彼は一体何がしたいのかしら。理解出来ない。
チョイスバトルが始まった、参加者ではない私は観覧席からこの戦いを見守ることになった。
戦いの結果は、ボンゴレの負け。
私は絶望して身体の力が抜け床に座り込んだ。
その瞬間だった、一人の少女が現れたのは。
そう、ユニだ。
彼女のおかげで、私たちの状況は変わった――――。
―――――
ついに彼との最終決戦、怪我人も次々と出てきた。私も真6弔花と戦ったりしたのだが、私は簡単に負けてしまった。次々とボンゴレ側には仲間がやってきて、あのヴァリアーや六道骸なんかも来て
これなら、勝てる!と私は強く思った。
GHOSTが出てきた時は焦ったけど、沢田綱吉がGHOSTを倒してくれた。
今、沢田綱吉は彼と戦っている。
正直言って、彼は強い。しかも、GHOSTが吸収した皆の炎は彼の体の中にあるという。
どちらが勝つか、わからなくなってきた。
「びゃく、ら…ん」
彼は真っ白い羽を生やしていた。彼はその翼を自分が人間を越えた存在であることの象徴だと言った。
何で、彼はこんなことを……。
戦いは、どんどん進んでいく
最初はやられてばっかりだった沢田綱吉も原型のボンゴレリングを使い始めたら、さっき一方的に攻撃されていたのが嘘みたいだった。
状況が一転し始めたのだ。
これなら勝てる、そう思った――――
ユニは命と引き換えにアルコバレーノを復活させるために………γと一緒に死んでいった。
どうして、こんなことに…。涙が溢れそうになった。彼の所為で皆が……
沢田綱吉はX BURNERを放った。結界が破れるくらい凄い炎、そんな炎を浴びた彼は…―――
カラン、とマーレリングが地面に落ちた。ああ、人の死とはこんなにあっけないものなんだ。
「白蘭……」
私は地面に落ちているマーレリングを拾いあげると握りしめた。彼から貰ったリングと一緒に…
「ねえ、白蘭」
「んー?」
「この箱は何?」
「ななしチャンへのプレゼント♪」
「本当に?」
「うん、開けてみて」
「わあ…」
「ななしチャンの為にリング職人に作らせた特別なリングだよ♪」
「ありがとう、大切にするわ」
スライドしていく彼との思い出。
すきだった、
彼がこんなことしようとしなければ
ずっと一緒にいるはずだった。
「愛せなくて、ごめんなさい」
空に向かって、私はそう呟いた。
もしも、二人が生まれ変わって
また会えたら
今度こそは…
「貴方を愛したいな…なんて」
私は頬をつたう涙を拭うと、仲間のもとに走っていった。