相合い傘 | ナノ
 


「おはよ」

「あ、おはよ…」

まさか、こんな朝早くから彼に会うなんて思ってなかった。

「お前、なんか部活でもやってんの?」

「帰宅部だよ」

私がそう言うと彼は不思議そうな顔をした。まあ、当たり前か。帰宅部のくせにこんな早く学校来るなんておかしいよね。

「あのね、早く学校来た理由は予習しようと思って」

「へぇ、お前頭良いの?」

「ち、違うよ。頭悪いから予習してるんだよ!」

私が一生懸命否定すると何故か彼は笑った。私、何か変なこと言った…?少し不安になった私は横に立っている彼の顔を怖ず怖ずと見上げた。うっ、前髪で顔が上手い具合に隠れていて表情がわからない。

「一生懸命否定するお前が可愛くて、…ごめんな笑って」

「き、き、き、気にしないで…!」

可愛い、なんて男子に言われたのが初めてだったので
私は言われただけで凄くドキドキしてしまった。ああ、頬が熱くなるのがわかる。私、どれだけ男子に対して免疫ないんだろ。恥ずかしすぎる。とりあえず彼にはバレたくない。こんな簡単に赤面するやつなんて思われたら生きていけないもん。
「ししし
なあ、昨日は本当にありがとな
凄く助かった」

「どういたしまして。あ、私そろそろ教室に行くね」

「ん、じゃあな」

彼に軽く手を振ると私は少し駆け足で校舎の中へ入った。



教室へ入ると既に友達が居た。ニヤニヤした顔でこちらを見てくるような気がした。

「おはよ…」

「おはよーっ
てか莉菜、あのベルフェゴールと仲良かったんだ〜」


やっぱり見られてたか。出来れば、この子には見られたくなかった。この子私の一番の友達だが、ちょっとアレなところがあって…


「違うよ、仲良いとかそんなんじゃ」

「否定するとこが怪しい」


アレなところとは彼女の勘違い癖だ。
毎度毎度、私が男子とちょっと話してるところを目撃すると勝手に勘違いしてニヤニヤとこっちを見てくる。本当にやめて欲しい。


「本当に違うって」

「…えー」

私が否定し続けると友達は私を見つめてきた。おいおい、何だ…その残念そうな目は。

「…私、勉強するから」

「でもでも…ちょっと待って」

「なに?」

「私、ベルフェゴールが女の子と楽しそうに話してるの初めて見たんだけど」

「えっ」

友達がいきなり変な事を言い出したので私は思わず叫んでしまった。

「まさか、ベルフェゴール…あんたのこと」

「違うよ、絶対そんなことないって」

あり得ない。第一彼とは昨日初めて会ったし…
友達ったら何言い出すんだ…まったく。
また私が否定したら友達は残念そうに「面白くなーい」と呟いた。面白くないと言われても困るぞ…

あ、そろそろ勉強しなきゃ時間がない。私は自分の席に着くと少し急ぎながら鞄から勉強道具を取り出した。

「あれ…」

「どうしたー?」

「ううん、何でもない」

友達にはそう言って誤魔化したが…どうしよう予習をしていたらわからない問題が出てきた。
この問題は後で解くことにして他の問題を解くかぁ…なんてことを考えながら私は窓から外を見た。ちなみに教室の窓からは中庭が見える。ああ、今日はいい天気だなぁ。なんてことをぼんやりしながら考えていたら彼を見つけた。

そういえば彼は何故こんな朝早くから学校来てるんだろう?
部活やってるようには見えないし。
今度会った時に訊いてみようかな。

「あっ」

私がじーっと見つめていたことに気づいたのか彼が手を振ってきた。
私は少し驚いて戸惑いながら手を振り返した。そういえばこういう風に男子から手を振られるなんて初めてかも。そう思うと何故だが急に嬉しくなってきた。



あ、笑ってる…昨日も思ったが彼の笑顔は素敵だなぁ。それに他の男子とは違うような笑い方だし…
女子たちがキャアキャア騒ぐのも無理ないな。
しばらく手を振っていると中庭に彼以外の自分が居るのが見えた。あれ、誰なんだろう。

どうして

彼のことを知りたいと急に思ってしまった。

誰かを知りたいなんて
私、こんな気持ち初めて。彼とまたゆっくり話したいな。

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