相合い傘 | ナノ
 


あれから
私は彼と話していない。



今日は文化祭当日。私のクラスは焼きそば屋で
私は友達と売り子をしている最中。



「莉菜センパイ」

「フラン君…あ、スクアーロさんも
お久しぶりです」


フラン君が来てくれるのは前々からわかってはいたがスクアーロさんまで来てくれたので私は驚いた。


「莉菜センパイ
とりあえず焼きそば
残ってるの全部くださーい
この人が全部買ってくれるって言ってましたんで」

「う゛お゛ぉい!!
嘘吐くんじゃねぇ
…焼きそば、2つ」

「はい。2つですね」



私が焼きそばをスクアーロさんに渡そうとした瞬間だった。


「ところでお前、ベルと喧嘩でもしたのかぁ?」

焼きそばを落としそうになった。彼の名前を聞いただけで、こんなに反応してしまう自分が凄く嫌になる。


「…………」

「変な事聞いて悪かったなぁ
ただ、ベルの奴が」

「あ、ミー
あっちで売ってる飲み物欲しくなりましたー」


スクアーロさんが話してるのを遮るかのようにフラン君は、そう言った。

「う゛ぉ゛ぃ…」

「じゃあ、莉菜センパイ
また会いましょー」

結局フラン君はスクアーロさんを無理矢理引っ張って行ってしまった。
それにしても、スクアーロさんが言おうとした事が気になる。
彼が、どうしたと言うのだろう?






―――――――



無事に文化祭も終わり、もう秋も終わろうとしている頃になっても私と彼は、会話をしていない。
気になって、メールを送ろうとしたが
結局いつも送信ボタンを押せないでいる。

フラン君は生徒会に入ったとかで忙しくなったみたいで、最近はフラン君とも会話していない。スクアーロさんも受験で忙しいみたいだ。






「……」

私は、屋上向かった。屋上に行けば彼に会えるような気がしたからだ。


だが、屋上には誰もいなかった。

「はぁ…」

私は落胆した。
こんな時に限って、彼は屋上にいないなんて。

私は屋上のフェンスに寄りかかるように座った。
いつも、彼と話すときはこうやって…
そんな事を思い出したら自然と涙が溢れた。

何で、何で、こんな風になってしまったんだろう。
私は、彼と居れるだけで楽しかったはずなのに。


「ベル…」

彼の名前を空に向かって呟くと、私は静かに目を瞑った。



「莉菜」

「莉菜…風邪引くぜ」


誰?とても安心する声。この声をずっと聞きたかったような気がする。


「しゃーねぇな」

「よし、これなら大丈夫だろ」

「じゃあな、莉菜…―――――」










「あれ…」

私が起きると、やっぱり屋上には誰もいなくて。
夢だったのだろうか、他に誰かいた気がしたのだが。

「…なにこれ」


誰の制服の上着なのか
わからないが優しく私に掛けられていた。まるで風邪を引かないように掛けられているみたいだった。

「誰がこんな事…まさか」


彼、だろうか?
私にこんな事する人なんか…彼くらいしか思い当たらない。

私は彼に上着を返すため、彼を探すことにした。

いない、ここにもいない。
どうして、彼が見つからない。学校内にいると思ったのだが…もしかすると彼は、学校内にはいないのかも知れない。

私は彼の上着をぎゅっと抱き締めた。


何処ですか



ベル君、
貴方はどこにいるんですか?



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