「それで、―――でさ」 「―――だろぉ?」 「――ですよねー。」 彼に会おうと休み時間に屋上に向かった。彼を驚かせたくて、そっと屋上のドアを開け、彼が居るか辺りを見渡す。 「あっ…」 私の予想通り彼は居たが…。 どうしよう、知らない人と話してる。珍しく彼の隣には先輩らしき人と後輩らしき人が居て、何やら楽しげに話をしている。 邪魔しちゃ悪いよね、私はそっと屋上のドアを閉めようとしたその時―――― 「ベルセンパーイ 彼処でコソコソとドアの隙間からこっちを見ている人ってもしかしてセンパイの知り合いですかー?」 「あ、莉菜じゃん こっち来いよ」 「…あ、うん」 なんてことだ、後輩らしき人に気づかれ、見つかってしまった。私としたことが…。私は気まずそうに彼らの元に向かった。 「う゛ぉ゛…もしかしてベルが話していた奴かぁ?」 「ん、そうだぜ」 「へぇー…これが噂のー」 「は、はじめまして…伊東です」 ―――――― 後輩らしき人の名前はフラン。フラン君は、やはり私より年下だった。 先輩らしき人の名前はスクアーロ。スクアーロさんも、やはり私の予想通り年上だった。 二人とも彼と仲が良いらしい。 「ベル君…」 「んー?」 「ちょっと話したいことが」 「あ、オレも話したいことがあったんだ」 「へ?」 「莉菜映画とか好き?」 そう言って彼が制服のポケットから取り出したのは、最近話題の映画のチケット。 「好きだよ」 「ししし、じゃあ今度の日曜日は映画な」 「うん」 映画…。彼と二人で映画。どうしよう、凄く嬉しい。 「あ、莉菜」 「なに?」 「メアド教えて」 「うん、いいよ あ…」 赤外線でメアドを送るには、今よりもっと彼に近寄らなければならない。 「莉菜ー?」 不思議そうに彼は私の顔を覗き込んでくる。 「あ、いや… その、準備できた?」 「ん、早く送って」 ぐっと彼の方から近寄ってきた。どうしよう、元から男子は苦手で話したり、近づくだけでドキドキしてたけど…彼が近づくのと他の人が近づくのは何か違う。凄く、凄く、ドキドキする。 顔が熱い。 「よし、受信したぜ」 「あ、うん」 私がメアドを送り終わると、丁度よく予鈴がなった。 「あ、休み時間終わっちゃいましたねー」 フラン君がダルそうにそう呟いた。 「なに、お前授業出んの?」 「ええ、まあ…ミーはセンパイ達とは違いますから」 “センパイ達とは”と言うことは、ベル君とスクアーロさんは授業をサボるようだ。 「あ、じゃあ…ベル君、スクアーロさん 私はそろそろ」 「お゛ぉ… じゃあなぁ」 「またな、莉菜」 「じゃあ、途中まで一緒に行きましょうか 莉菜センパイ」 そう言ってフラン君は私の腕を引っ張った…――――― 「莉菜センパイって、ベルセンパイのこと好きなんですかー?」 二人きりになった途端、フラン君は私に質問してきた。 「わからない…」 でも、好きか嫌いかって訊かれたら好きな方。 それに最近、彼のことばかり頭の中に浮かぶ。気になって気になって仕方なくて、気がつけば目で追いかけてる。 「フラン君」 「はいー?」 「フラン君は恋ってしたことある?」 私がそう質問するとフラン君は私から目を逸らした。答えづらい質問だったかな? 「まあ…、一応ありますけど…」 「そっか」 「莉菜センパイ」 「なに?」 「ミーは、莉菜センパイ達が付き合えばいいなって思ってるんですよー」 「えっ」 私が驚いてフラン君の顔を見ると、フラン君はクスクスと笑った。 余程私の顔が面白かったのだろうか? しばらく廊下を歩いていたが階段が見えるとフラン君は立ち止まった。 「じゃあ、ミーはここで」 フラン君は私に軽く手を振ると、少し駆け足で階段を降りていった。 彼のこと 好きなのだろうか? 今度友達やフラン君に相談してみようかな。 |