「莉菜」 「莉菜…」 うー…だあれ?まだ寝かせてよ。私は寝たいの… 私がそう言っても、声の主は私の名前を呼び続けた。とても聞き覚えがある優しい声で。あれ、この声は、もしかして…いや、もしかしなくても、彼の声? 「莉菜」 「ひゃあっ!?」 「…っ、おま、急に起きんなっ」 私が目を覚ますと私のすぐ隣に彼が居た。彼は私が突然起き上がったので驚いていたが私だって彼の声に驚いた。なんで、彼が居るの? 私は慌ててあたりを見渡した、あれここは屋上?それよりどうして空の色がオレンジなの。これじゃあ夕方みたい、あれもしかして今、夕方… 「あれ、私なんで」 「あー…それは」 彼が言うには私は眠いと言い出すと彼に寄っ掛かったまま寝てしまったらしい、勿論授業をサボって。私としたことが授業をサボるだなんて… 「あ、六限は数学だったのに」 「悪ィ、もっと早く起こすべきだったよな?」 「ベル君は悪くないよ…それより私の所為でベル君授業サボっちゃったよね?ごめんね」「あー…まあ、大丈夫だぜ オレ、天才だから授業受けなくても平気だし」 「でも、」 「それにオレ、この時間は大抵サボってるし」 彼は笑いながらそう言ったが、私は罪悪感でいっぱいだ。授業サボってしまった。しかも彼を道連れにして… 私は申し訳無くて彼の顔をまともに見れなかった。すると彼は私の頭を軽く、ぱーんっと叩いた。 「え、」 「暗い顔すんなって」 「ごめん」 「ばーか。謝るとこじゃねーよ」 「ベル君…」 泣き出しそうな私に向かってそう言うと彼は私の頭をわしゃわしゃと撫でた。あれ?私、いつも彼から撫でられてないか。 「もう夕方だし、途中まで一緒に帰ろーぜ」 「うんっ」 私は涙をぐっと堪え、彼に微笑んだ。 ―――――― 「うわ…、校舎ん中、オレたち以外はもう生徒は誰一人居ないんじゃね?ししし」 「あはは、そうかも」 廊下に出てみると昼間のようにガヤガヤと五月蝿くしていなかった。辺りはシーン、としていてとても静かだ。誰も居ないのだろうか?この静かさは校舎から出ても変わらなかった。校庭にも誰も居なくて、あれ今何時何だろう。携帯で確認したかったが生憎携帯は充電が無くなっていて電源切れている。 「本当にごめん…」 「だから謝んなって」 ちなみに彼に時間を訊いたら、彼も携帯の充電が切れてて時間がわからないらしい。二人して充電がないとか笑えない。 学校から出ると少し小走りで私達は駅へと向かう。 「ベル君は電車だよね」 「莉菜はバスだったっけ?」 「うん」 「あ、そうだ。莉菜」 「なに?」 「お前のとこ文化祭の出し物なにすんの?」 「文化祭?」 「なに、お前文化祭のこと忘れてた?」 忘れてた、私達の通う学校は来月文化祭なのだ。そういえばHRで先生や行事委員が話して色々と決めてたっけ。確か私のクラスは… 「なんか…焼きそば的なのを売ります」 「何だよ、的なって」 「焼きそばみたいなものってこと」 「焼きそばじゃねーのかよ」 「わからない」 「わからないのかよ」 彼はものすごく笑うと歩くスピードを少し落とした。どうやら私にあわせてくれているみたいだ。そんな気を使わなくていいのに。 「ベル君のクラスは?」 「たこ焼き的な」 「的なって…」 「仕方ねーだろ 入れる具が決まってないんだから…」 「ベル君、たこ焼き的なの作るの?想像出来ない…」 私は彼がたこ焼きを作るのを頭の中で思い浮かべてみた。あれ、なんかおかしい、いや面白い。学校中からモテモテのベル君がエプロンつけてたこ焼き作るとか。想像したら凄く面白くて、私は笑ってしまった。 「うるせぇよ てか作らねーし。オレ売り子だから」 「なんか残念」 他愛もない会話していたら、あっという間に駅についてしまった。もう少し話したかったな…。そう思った瞬間だった。 「莉菜……あのさ」 「なに?」 「今度の日曜、遊びに行かねぇ?」 「えっ!」 彼からの突然の誘いに私は驚いた。まさか、彼がそんなこと言うなんて…どうしよう、凄く嬉しい。 「嫌だった?」 「嫌じゃない、寧ろ嬉しい」 どうしよう、嬉しくて凄く心臓がドキドキする。 「なら良かった…詳しい話は明日学校で じゃあな」 そう言って彼は少し駆け足で去っていった。 突然の誘い どうしよう、嬉しすぎる。 |