「伊東さん、ベル君とは付き合ってないって言ってたよね?」 「うん」 「じゃあ何で昨日、一緒に屋上居たの?」 「あれは、たまたま…」 「本当に?」 休み時間になったとたんに昨日の女子に呼び出された。そして私は今色々なことを訊かれている最中だ。てか女子怖すぎる。口は笑ってるのに目が笑ってないよ、この子。どうしよう、助けて…私がびくびくしていた時だった。 「はいはーい。ごめんなさいね ちょっと莉菜に用があるから借りるわね」 聞き覚えがある声、この声は私の友達の声だ。私の腕を引っ張りながらそう言った友達はあの女子に向かって、ニィと微笑んでいた。 ―――― 「大丈夫だった?」 「なんとか…」 「てか、あんたバカなの」 「えっ」 「呼び出されて、ホイホイついていく馬鹿はいないよ」 友達にそう怒られた。でも私だって最初は… 「てか、あんた女子に嫌われるようなことしたの?」 「ううん」 「……ベルフェゴール」 「え、?」 「もしかして…アイツとあんた最近仲良いから?」 「違うよ、やだなー」 「嘘つくな」 「すみません」「……謝らなくてもいいけど、少し気をつけた方がいいわよ?アイツ凄くモテるんだから」 「うん、わかってる…」 「…はぁ、でも私はあんたのこと応援してるから」 そう言って友達は私の肩にポンっと手を置くとニヤニヤと笑ったので私は慌てて否定したが、友達は余計にニヤニヤして……私は友達から散々からかわれると屋上へ向かった。勿論、彼に会うため。 ――――― 「ベルフェゴールくんっ」 「あ、莉菜」 「約束通り来ちゃいました」 「ししし、待ってましたー」 「あ、ベルフェゴール君」 「んー? てかさ、その呼び方やめてくれねぇ?普通にベルでいーから」 「え、……ベル」 「なーに?莉菜」 ぐいっと彼の顔が近づいてきた。私が驚いて顔を赤くすると彼は悪戯っ子のような笑みを浮かべた。 「あの、その…っ」 「ししし、莉菜カワイー…」 可愛いなんて久しぶりに言われた。ああ、もう彼は私なんかをからかって楽しいのだろうか?…楽しいだろうな、男性に対して免疫なんかない女をからかうのはさ。 「ベル君、は」 「…君付けしなくていいのに、お前って奴は」 「だって、呼び捨てするの」 なんか恥ずかしいんだもん…彼に聞こえるか聞こえないかのくらいの声で私はそう呟いた。 「あ、あのね…ベル君 ベル君は、そのモテるわけですが」 「ん」 「好きな人とかいるの?」 「はっ?」 「あ、ごめん。変なこと聞いて」 「いや、別にいいけどさぁ… 急に変なこと言い出すから驚いただけだし」 「そう?」 「そう。だからすぐそーやって謝るのやめろよ」 「あ、うん。わかった…ごめ」 「ほら、また」 「うわああ、ごめんなさい…あっ」 「お前ってやっぱり面白いな」 彼はそう言って大笑いをした。うぅ、なんかムカつくぞ。 「ベル君、質問の答え」 「あーはいはい」 私がそう言うと彼は笑うのをやめて、先程の質問の答えをゆっくりと話し出した。 「好きな人、だろ? 気になってる奴ならいる」 彼の言葉を聞いて私の心臓は、ズキッと痛くなった気がした。そうか、好きな人いるんだ、誰なんだろう。彼が好きな人が少し羨ましいな…。 あれ、私…今羨ましいって思ってしまった? もしかして 私、彼が好きなの? いやいや、まさかね…。 気のせいだよね? 「へぇー、そうなんだ。…お、応援するね」 「ああ、サンキュな」 きっと、この胸の痛みは気のせいよ彼のことなんか好きじゃない。 彼は、ただの友達だから。 |