ハツコイ。 | ナノ
 


アイツは第一印象から最悪だった。


ある日わたしはボスに呼ばれた。
最初わたしは幹部昇進の話だと思っていた。
まあ、幹部昇進の話だったんだけど!


「おい、ユラお前は今日から幹部だ」

「ボス!ありがとうございます
もちろんわたしは、マーモンの後任ですよね」

「あぁ?お前は雲だ」

「え…?わたしは霧の波動の方が強いですけど」

「新しくスカウトしてきた術師がマーモンの後任になることが決定した」

「何でですか?
納得いきません、わたしは10年間頑張って頑張ってやっと幹部になれるというのにノコノコとやってきたヤツが幹部になるなんて」

「お前、わかってんだろ
この裏社会は実力がすべてだ」

「ですが…」

「雲でもいいじゃねぇか」

「…はい」

わたしは、それ以上は何も言えなかった。


―その次の日だった…
フランに会ったのは。


「…貴方がユラですかー?」

「えっとどちら様?」

「ミーはフランでーす」

「ああ、例のスカウトされた?」

「はい、そうでーす
ボスがユラからアジト案内してもらえって言ったので会いに来ました」

「そう、ボスがそんなことを
…いいわ、案内してあげる」

「ありがとうございまーす」



―――


にしても…
会話がない、うわ、なにこの空気。
とりあえず何か話した方がいいわよね?

「フ、フランだったかしら」

「何ですかー?」

「あの、その頭の蛙何?」


「あーこれはベルセンパイが被れって」

「ベル先輩が?」

あぁ、見えてベル先輩もマーモン先輩のこと…。

「あのー」

「何?」

「小さい頃からヴァリアーに入ってるんでしょう?
なのに今まで幹部になれなかったってよっぽど才能無いんですねー

てか、貴方みたいな人が幹部昇進ってヴァリアー幹部って案外弱いのかもー」

「あぁ?何あんた
わたしのことまで許すけど
先輩達を侮辱するのは許さないわよ」


「単純馬鹿」

「なぁ!?」

わたしはカチンっと頭にきた。
普段おとなしいほうだが流石にムカついたのだ。
わたしが弱いのは自分でもわかってた。でも、わたしを馬鹿にしたフランが許せなかったし、先輩達を侮辱したのはもっと許せなかった。
わたしはフランの頬を殴って自室に戻り一人で泣いた。
悲しくて、悔しくて。


次の日から私はフランと犬猿の仲になった。
でもいまだにルッスーリア先輩からは実は仲が良いとか、両思いとか変な勘違いされている。

ありえないありえないありえない。

フランのことを好きになるなんて死んでもありえない。もっと大嫌いになるのはありえるけど。

そんなことを考えていたらあっと言う間に任務の時間になった。

今日は最悪なことにあいつと、そうフランとの任務だった。


「馬鹿ユラ遅いですよー
ったく早く行動しろよー」

「うるさい…」

ったくいちいち言われなくてもわかるわよ。
あーでも今日は頭がズキンズキンするし。
調子悪い気もするし。
最悪。

早く任務終わらせようっと。


「ほら、ミーは正面から行きますから
ユラは裏から…」

あれ、フランの話がよく聞こえない。
何でだろう?頭がボーッとして…

「…ですよーわかりましたー?」


「うん」

私は話を聞いたフリをして適当に返事をしフランとわかれた。

とりあえず敵の見張りに毒針を刺して倒し、中に侵入した。

「…お出迎えか」


私はあっと言う間に敵に囲まれた。こっちの作戦はバレバレだった訳か…

「う゛…」

なんで、こんな時に頭が痛くなるの?
このままじゃ殺られる…

「ったく…仕方ないですねー」

わたしは薄れゆく意識のなかフランの声が聞こえた気がした。


―――――


気がつくとわたしはベッドの上で隣にフランがいた。


「…っ
なんでフランが」


「あー、ユラが熱で倒れたのでミーが残りの敵を倒して
ユラを抱えて帰ってきたんですよー」


「…」

最悪。こんなやつに助けられるなんて。


「ったくおかげてミーがボスに怒られましたー」

「…なんで?
わたしが体調管理を怠ったせいなのに」


「何言ってるんですかー?
気づかなかったミーの責任でもあるんですー
心配したんですから」

とフラン言われた。
心配?フランが?嘘みたい。

「嘘、」

「嘘じゃないですー
調子が悪いときは無理しないでくださいね」

そう言ってフランがわたしの頭を撫でた。


何か…
フランがフランじゃなくて、わたしもわたしでなぜかドキドキしてるし。

調子がますます狂う。
でもたまには、たまには…素直になるのも悪くないかもしれない。


「ありがと…フラン」


「どういたしましてー」

 
何年ぶりだろうか。
異性の前で笑ったのは。




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