「…」
「…重症だな」
「凶王三成が聞いて呆れるわ」
「あんな三成殿…見とうなかったで御座る」
「凶王も人の子ってね…」

上から元親、元就、幸村、佐助。
四人の三成を見る目は白けていました。
「そう落ち込んでおってもなまえは帰って来ぬ」
「…なまえ…」
確かに部屋の隅にて膝を抱え座り込む三成を誰一人恐ろしいとは思いません。
それで大丈夫なのでしょうか、凶王様。
「なまえ…なまえは何処だ私のなまえ…」
「何が起きたんだよ?」
元親が亡霊のような三成を横目で見ながら大谷に聞きました。
「これを見やれ」
ひらひらっとした文。
元親はそれを受け取り、整った字を読み上げます。
「『私は少々暇を取ります。捜さないで下さい。
さようなら三成さん。
…なまえ』」
「それを置いて二日前に何処かへ行ってしまったのよ「ああああああ!!」…やれ落ち着け落ち着け」
元親が読み上げると三成は絶叫。慌てて保護者大が三成を落ち着かせにいきました。

「ああ」
ぽん、と突然幸村は手を叩きました。
「なまえ殿に捨てられたので御座るな」
「ああああああ!!」
「旦那しーっ!そんなこと言っちゃ駄目!!」
再び絶叫し出す三成。佐助は三成の断末魔以上に真顔の幸村が恐ろしかったのでした。

「西軍の大将とあろう者がこれでは埒が開かぬわ。なまえが何故消えたのか、何処へ行ったのか探るのが先決よ」
元就が正論を唱えます。
「理由な理由…」
「理由で御座るか…」
「理由ねぇ…」
塞ぎきっている三成以外は、皆思いました。

理由がある、と。

石田は束縛激しいからなァ…と元親。
確かに三成はなまえを戦の時以外は城の外へ出したがりません。

三成殿は悋気も激しいで御座る…と幸村。
なまえに近付いた男は即斬滅ですから。

凶王は夜も激しいからねぇ…と佐助。
夜な夜な聞こえる嬌声はなまえのものでしょう。

…正直挙げきれない程、なまえが逃げる理由があるのでした。

「…理由は如何にしろ三成よ、なまえが行きそうな所などそうあるわけではなかろ」
「…そうだよなァ」
元親は苦笑い。
誰が凶王の女を匿えましょうか。自分なら恐ろしくてできません。
「その通りだ刑部!!私の女を匿えるような度胸を持った輩などそういない!」
自覚がある様子の三成は突然立ち上がりました。
「行くぞ貴様等!なまえの行きそうな所を片っ端から捜すぞ!」

「「「…」」」

なまえが凶王に捕まりませんように───。
幾人かはそう思ったのでした。




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