緑間真太郎のおは朝信者ぶりを知らない生徒など、秀徳高校の学生ではない。

そんな風に言われる程この秀徳高校での、おは朝占いに染まった数々の所業は有名だった。
おは朝が突出しているだけで、それを抜きにしても緑間は有名。

毎朝、クラスメートで同じバスケ部所属の高尾にチャリアカーなる乗り物を引かせ登校してくる、とか。バスケ部では1日3つまでワガママを言っていいとか。

悪く言えば幼児性にいい塩梅に知恵をもたせてこじらせたような奴。

何かと語りだせば話題に困らないこの緑間真太郎に、最近いつも一人の女子がつきっきりになっている。



「真太郎、袖解れてる」
「…気付かなかったのだよ」
「へー、真ちゃんが気付かないなんて」
「ぬかったのだよ」

今までは緑間と高尾、この組み合わせが多かったがここに新しいメンバーが加わった。

「多分これくらいならすぐ治せるからじっとしてて」

鞄からソーイングセットを取り出した女子はみょうじなまえ。

一か月前は緑間と高尾の隣のクラスだったにも関わらず、何故か移動してきた。

理由はその時緑間の口から語られ瞬く間に校内中に広まった。


「みょうじは、俺のラッキーパーソンなのだよ」


つまりはこうである。

おは朝占いのコーナーで視聴者を抽選で選び、当選者を占うという企画があった。
毎日おは朝占いの言い付けを忠実に実行する緑間がそのチャンスを逃すはずもなく、
応募して当てたのだった。

そこで占い結果に出てきたラッキーパーソンが、
「8月生まれの獅子座かつA型、身長175pで尚且つ身近にいる異性」。

そしてその資格を満たしたのがこのなまえだったのだ。

最早、周囲からしたら運命の人である。


「はい。大丈夫」
「すまない」
「本当、なまえちゃんって器用だよね」

しかもなまえは姉御肌で母性に溢れる珍しいデキた女子高生だった。
振り回されても大概の事は許してしまう。


最も二人の近くにいる高尾はつくづく思っていた。


「…真ちゃん、マジでなまえちゃんには感謝しないとね。色んな意味で」
「どういうことなのだよ」
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