俺様大注目印のついた青学のルーキー越前くん。そんな正直テニスは詳しいわけじゃないのでどの辺が大注目なのか全く分からないが、 印がついてたらついつい気になってしまうのは当然だ。

「……」
「そんなにじっと俺のこと見てどうしたの?」
「俺様大注目……」
「は?」
「なまえちゃんも大注目……」
「何言ってるの?」

目測、身長150cm。私より小柄な男の子だ。年下感がする。自分には弟や妹がいない上に年下にも子ども扱いされる始末だ。だから、弟や妹が欲しい。欲を言えば2つくらい離れてたらいい。
そんな欲を抱えているから、見た目がまだまだ幼い子を猫可愛がりしたくなってしまう……けど越前くんはクール感も同時に醸している為容易に手を出せない。
ほら今もベンチに座ってる姿はクールで凛々しい。まるで気位の高い猫みたいだ。

「ねえねえ越前くん……」
「さっきから、おかしいんじゃない?みょうじ先輩」
「そうかな?」
「そう。主にその手が」
「あっ!」

ついつい触りたいと思っていたのが自分でも気付かないうちに手つきに出ていた。わなわなと震えていた手を引っ込める。

「何もしませんよ〜!大丈夫でちゅよ〜!」
「俺のこと何だと思ってるの」

私が無害だということをアピールしたつもりだったのにあまり効果はなかったようだ。越前くんの防御は堅固だ。

「俺のこと大注目だって言ってたよね?」
「う、うん……大注目です」
「へえ……」
「な、何なのその良いこと聞いたって顔は!」
「俺と仲良くしたいんでしょ?」
「あ、あわよくばですが」

何で私が口調に気を遣っているんだ。
越前くんとの年の差……およそ2つから発生するもやもやを抱えながら、越前くんの様子を伺っていると、越前くんは練習中よく見せるあの不敵な笑みを見せた。



「じゃあ1つ交換条件ね」



それが10分位前のこと。

「くうううう……ちゃんと交換条件を聞いた上で飲めばよかった……!」
「ポンタを?」
「そうじゃない!そうだけど!」

私は自販機に連れて行かれ、私より2歳も下の男の子にジュースを買うように脅されたのだった。小銭がなかったから1000円札を入れたら横からしれっと『あ、ペットボトルで』とか言ってきやがった。
くそっ、目敏い!でも憎めない!

「いつも缶で飲んでるくせに……」
「俺が缶で飲んでるの知ってるんだ」
「ち、違うぞ!別にたまたま見ちゃっただけっていうか……」
「へー植え込みからたまたま見ちゃっただけね」
「私がそこにいたの知ってたんだ……」

越前くんがポンタ飲みながら猫とじゃれていたのを息を潜めて見ていただけだ。海堂くんは猫真似でようやく気付いたのに越前くんは気付いた上で知らないフリをしていたというのか。

「ううう、さよなら320円よ……越前くんとの友好のため」
「ちゃっかり自分の分も買うんだね」
「オレンジ飲みたいんだもん!さ、ポンタどれがいいの?」
「グレー……」
「えっ」

私の指は一度押したオレンジをもう一度押してしまった。ガタン、と音がなって取り出し口には2つのポンタオレンジのボトル(計320円)。

「……はいポンタ」
「グレープ」
「ポンタ」
「俺グレープって言ったよ」
「越前くん知ってる?どのポンタも成分表を見ると全く一緒なんだよ。つまり、目を瞑って飲めば全部ポンタグレープだから。オレンジもグレープだから」
「へぇー」
「ちょっと!待っ……何をするやめろぉぉ!」

越前くんは私の制止を振り切り、自販機のポンタグレープを購入した。金額メーターに悲しく、奇しくもオレンジ色の字でおつりが表示される(計520円)。
越前くんはやっぱり不敵な笑顔を浮かべている。ポンタグレープのような爽やかさがプラスされている。これだから私はオレンジの方が好きなんだ。

「どーもみょうじ先輩」
「うううう君は悪魔だ……可愛い顔した悪魔だ……マジ堕天使……ルシファー……」
「まだまだだね」
「身長5cmも低いくせにっ……」
「それ関係ない。でも交換条件って言ったし、約束は守るよ」

ペットボトルのキャップを開ける越前くんに私はやや疑いの目を向ける。尾行にも気付く彼は当然それにも勘付いている。

「今日はお昼一緒に食べる?」
「いいの?」
「約束は守るって言ったでしょ?」
「越前くぅん……天使……大天使ミカエル……」
「だから何なのそれ?」
「ガブリエル……」
「変えたらいいってわけじゃない」

しかし、私はこの昼食会で色々と後悔をしてしまう。
……この約束にはポンタグレープという更新料がいるのだということを知ってしまったのだった。


2016.04.22

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