「……ぜんざいくん」
「財前っすわ。わざとすか?」
「わざとじゃない!うっかりだから!それで財前くん。そのイヤホンジャックって……」
「ああ、これっすか」
「そ、それは!!!!?ハロのイヤホンジャック!」
「好きなんすか?」

財前くんのスマホにくっついていたのは緑の球体。私の大好きなハロのイヤホンジャックである。

「好きだよ!ドラえもんとポケモンと攻殻とガンダムは私のバイブル!ハロの真似をよくしたなぁ」
「それモノマネのバイブルってことっすか?せやけど……」
「どうしたの?」
「意外に話通じる人やったんすね」
「意外にて……」
「好きなMSは?」
「クィンマンサとかクシャトリヤとか、キュベレイもだけど肩アーマーついてるやつ」
「俺はベルティゴっす」
「ふおおおおお財前くん」

財前くん……!さっきは善哉とか言ってごめんね!こんなに話が合う人だとは思わなかった。日吉くんを5割増しくらい冷たくした無愛想な子だと思ってたけどお姉さんの勘違いだったよ許して!

「財前くん大好き!」
「何すか急に」
「Xガンダム版キュベレイだぁぁ!嬉しい!やっぱり表面上はあれでも人は分かり合えるんだね!」
「どこのニュータイプっすか」

何だかんだ財前くんは話を合わせてくれておりテンションが鰻登りだ。わぁぁお姉さん小躍りしたいよ!是非うちの母親(リアルハマーン様)を見せてあげたいね。




「ΖもいいけどΞも捨てがたいんだよね……」
「俺はΞよりHi-νやわ」
「Hi-νのカラーリングかっこいいもんね……でも私はνの方が好きかな!」


「なぁに〜あの二人盛り上がっちゃって〜」
「何やガンダムで盛り上がっとるらしいで」
「財前の奴、ガンダム観るんやな」
「せやけど……」

割って入るのが申し訳なくなるくらいに、財前となまえは二人の世界を形成中である。趣味全開で語り合う二人の中に割って入るのはなかなか難しい。謙也と小春と一氏は遠巻きから伺っている。財前も満更でもなさそう。

「なまえちゃんと光クンって守備範囲が被ってるわね」
「性格はまるっきり真逆やけどな。ちゅーかこれ、白石おもろないとちゃうんか?」
「ほんまおもろない」
「げっ、白石!?」

いつの間にか3人の隣にいた白石は、とってつけたような笑顔を携えて財前となまえの所に向かっていった。
案の定ジェラシーが大炎上中のようで、何か背中に色々と背負っている。

「今度一緒にガンダム観よ!」
「なまえちゃん。何しとるん?」
「おお!白石くんか。財前くんと色んな話してたの」

白石はなまえの肩にがっちり両手を添えている。
遠巻きながら3人はしっかり白石の顔に『俺の大天使と何を仲良く談笑しとるんや』と書いてあるのを確認した。あの白石が先輩とは思えないような態度である。

「へぇー。財前と……なぁ」
「何か怖いよ……白石くん」
「怖い?俺はなまえちゃんには優しいで?」

うわぁ……と3人は白石に若干引いていた。多少見なければよかったとも思ったがまあこんなに大人気ない白石を見られるのはレアだ……と考えておくことにした。
青ざめたなまえの顔には『めっちゃ怖いのでやめてください』と書いてある。でも当人達は都合の悪いことに互いの顔に書いてあることが全くの判読不可能らしい。
白石もなまえの顔に書いてあることを読めていないようだ。
更にここには毒舌の権化がいたことが益々拍車をかける。

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