「はぁ……なんであんな可愛いんや」
「それはなまえを指して言うとるん?」
「当たり前や!この空間のどこなまえちゃん以上に愛らしいものが存在すんねん」

恋というものは会わない間に加速する、というのは大体の人に通じる性質である。白石の場合はこれがかなり酷い。白石はなまえと再会するまでになまえに勝手に色んな架空の属性を付与していった。@ラムちゃんA天使の翼と輪B可愛いC可愛いすぎるである。
今も炎天下の中でボール拾いをするなまえを愛おしそうに見ている。


「謙也!見た!?背伸びした!なまえちゃん背伸びしたで!」

まるでパンダを見とるみたいや……と大興奮している白石を見て謙也は引いていた。
しかし、興奮していた白石がにわかに静かになる。そして、なまえを凝視してうなり始めた。

「……」
「どうしたんや白石」
「なまえちゃん、スリーサイズいくつやろか」
「うわぁ」

白石はなまえの体を上から下まで舐めるように見ている。お世辞にもスタイルが良いとは言えないがなまえだったら恐らくもう何でも萌えられるのが白石蔵之介という恋する盲目な男である。

「胸は忍足くんに聞けばわかるか」
「分かる侑士にもドン引きや」
「俺なぁ、なまえちゃんの全てを知りたくてしゃーないねん。体のどこから洗うとかそういうんのも知りたい。体の隅々まで余すところなく知りたい」

白石にはストーカーの素質がある、と後に四天宝寺テニス部で吹聴されるのはここに起因する。

「お前、なまえは天使ちゃうんかい。天使を邪念で汚してどないんすんねん」
「何いうとんのや謙也。
天使は汚してナンボやろ?」
「最低かお前は!純粋な恋心とか言っとったお前はどこ行ったんや!」
「純粋な恋心と男としての然るべき欲望は別物や。なまえちゃんとはプラトニックな関係を築きたい……せやけどエクスタシーな関係にもなりたい」
「ほらお前の邪念を感じ取ってなまえがこっちを見とるで」
「マイエンジェルが俺に目配せを……!」

マイエンジェルとは言いつつも頭の片隅でなまえにいかがわしいことを働いている白石。その邪念を感じたのかなまえが白石と謙也を訝しげに見ていた。そして、集めたボールを持ってこちらに向かってくるではないか!

「さっきから二人で私をジロジロ見てどうしたの?」
「いやぁ、なまえちゃん可愛いーなー思て」
「都合がええな、白石」
「きゃっ!私やっぱり可愛い?」
「世界一可愛いで。俺のお姫様や」
「……白石くんよくそこまで恥ずかしいこと言えるね……」
「ほんまやからな!」

あまりに恥ずかしい言葉を並べる白石になまえの方が寧ろ心の傷を負った。
それからなまえは謙也と白石を見ると首をかしげる。

「でもなんだかなぁー。すごい疚しいオーラを私の本能が感知したっていうか……視線がぞわぞわするっていうか」
「ほら白石!勘付かれとるやんけ」
「主に謙也くんの方から」
「お前の本能めっちゃ感度悪いな!」
「本能!?感度やと!?なまえちゃんの前で何ちゅーこと言うんねんお前は!」
「お前はもっとヤバいこと考えとるやんけ!」
「天使を汚してええのは俺だけなんや」
「面倒臭いな!」
「(うるさいなぁ)」

なまえがそんなことを思っていると、謙也が呆れた顔つきで白石に言う。なまえは『怒ったり呆れたり大変だなぁ』と他人事のように2人を見ている。

「ハァ……ハァ」
「やるな謙也。流石スピードスターや」
「(やっと終わった)」
「この際堂々と聞いたらええねん。コイツは奇行種やで。ホイホイ教えてくれるかもしれへん」
「すごいバカにされたのは分かる」
「……教えてくれる……」

一通り口論を終えて謙也がそう言ったところ、白石に見つめられてなまえはますます訳が分からない。白石と謙也の口論を話半分に聞いていたのでいまいちよく分かってないのだ。

「聞いてまえや!なまえ、スリーサイズゆーてやれや?」
「修正パンチ!」

謙也はなまえからアッパーを食らった。ついついストレートに聞いてしまったのが運の尽きである。

「その破廉恥極まりない性根を叩きなおしてくれるわ!」
「待て待て待てマジでとばっちりや!絞殺はあかん!く、苦しい」
「とばっちり?は?絶対に許さん」
「なぁなまえちゃん」
「ん、どうしたの?」
「なまえちゃんに質問してもええ?」
「突然だな。どうぞ」
「解放された……!」

謙也を解放した手を後ろで組み、白石を見上げるなまえ。次はなまえの純真無垢な視線に謙也の方が罪悪感を覚える。

「……ご趣味は?」
「趣味?色々かなぁー。ゲームとかしたりアニメ観たりとか、音楽鑑賞とか」
「好きな食べ物は?」
「いっぱいあるよ。最近のマイブームはあたりめかな」
「おっさんか!」
「そんななまえちゃんも可愛いなぁ……。
それで、それでなまえちゃんはお風呂のとき体のどこから洗う!?」
「え」

流石のなまえも驚いた。謙也はその隣で『一発かましたれなまえ!』と胸躍らせていた。

「どこから洗う?」
「内腿かな」
「ハァァァ……内腿か、内腿なんか……!ハァァァ!」
「随分力強いため息だね」
「白石はな、萌えを噛み締めとるんや……。
ちゅーかお前何で答えたん」
「白石くんの目を見てたら答えなければならない気がして」
「なまえちゃんの内腿」
「うるさいなお前は黙っとれ!」

内腿を連呼し空を見上げたり跪いたりする白石を見て、流石のなまえも『うわコイツヤバい』とすっと距離を取ってどこかへ行ってしまった。恐らくしばらく四天宝寺のコートに寄り付かないだろうなまえを思い、謙也は大きくため息を吐いた。

「……白石、この後どうなっても知らんで」
「神様なまえちゃんが内腿から洗うように創ってくれておおきに!ジーザス!」
「はぁぁぁ……」

謙也は誰かさんとは対照的に弱々しくため息を吐いた。


2015.11.19
白石くんは私の中で内腿好きそうなイメージ
があってそれが出せて良かったです!白石くんはやっぱり変態くさいのが似合うかなぁ〜と……それでもイケメンなのが憎らしいです笑

澪様、リクエストありがとうございました!
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