跡部くんと星空下の散歩から帰り着いた直後に突然この合宿の真実を告げられた。


ど う い う こ と な の …… 。


「合宿自体は継続だ。
それでみょうじ、明後日の朝に物資を載せて船が来る」
「なんと」

つまり、その船に乗れば私は帰れると。


……私にとってピアノがないのは辛い。
テニスのない氷帝学園テニス部と同じなわけで。


「A〜!?なまえちゃん帰っちゃだめ!」

ジローちゃんが可愛く引き止めてくる。
私だってこのまま帰るのは惜しい気もする。

テニス部のみんなが一生懸命に葛藤しながらテニスに向き合っている姿は言葉にできないほどの苦悩や情熱や歓喜が詰まっていた。

その姿には私のインスピレーションが感化させられるのもまた事実。

でも……。

「やっぱ暑いから帰るね」
「薄情者ですねみょうじさん」

日吉くんから冷たい視線を向けられる私。

暑いのはどうにもならないじゃん!
日吉くんが引き止めてくれるなら嬉しいよ!
あと手塚くんも引き止めてくれたら私嬉しくて死んじゃう。

「別に引き止めませんよ」
「薄情者ですね日吉くん」
「みょうじ、てめー、誰が帰れると言った?」
「えっ」

跡部くんが会話に割って入ったかと思うと、私にやや望みを奪うかのような言葉を放ってくる。

「お前もここで合宿だ」
「は?」
「監督……お前にとっちゃコンクールの手続きを踏んでくれる榊先生が『この島』で、合宿する許可をくれた。もちろん保護者の許可ありでだそうだ」
「は?」
「明後日の朝来る船にはグランドピアノを積んである。わざわざブロードウッドのピアノを俺様の家から運ばせたんだぞ」

跡部家にはブロードウッドとかあんのか!
イギリス王室御用達メーカーじゃねーの!

「いや、それはとてつもなく弾きたいですが」
「あとな」

跡部くんが追い打ちをかける。

「ハーゲンダッツは合宿に最後までいた奴だけが貰える」

ドン!という効果音と共に、私の選択肢はすでに一つに絞られてしまった。

「ジローちゃん私残るよ……」
「やった〜!」
「貴方には食欲しかないんですか?」
「そんなわけないでしょ!自重するわよ!」
「まあ頑張ったからな。ハーゲンダッツをみょうじには一個くらい持ってくるように連絡しといてやる」
「わーいグリーンティー!」
「やはり食欲か」


この夏開催、テニス部&みょうじ合同合宿。

回復アイテム、ハーゲンダッツ×1。
状態異常、相変わらずの夏バテ。
助っ人に各校テニス部を加えて、

強くてコンティニュー!


2016/9/18修正

夏過ぎましたがここまでお付き合いありがとうございました。
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