真夏の日差し。
真っ白なビーチ。
バカンスに必要な条件を揃えた心躍るような陽気の常夏の島。スネ夫みたくのび太に自慢したら、きっと彼は猫型ロボットに縋り付くような素敵な島だ。
しかしバカンスできない理由がある。
それは、
私が夏バテでダウンし……
更には南の島には人っ子一人いないから。
「……」
「おいなまえ、顔死んでるぞ」
「……死なずにいられますか」
じりじりと照りつける日差しは着実に私の体力を奪っている。今年はかなりの猛暑らしく、そもそも夏バテが始まったのは7月に入って、夏休み直前頃である。
私は跡部くんに頼まれてお手伝いとして……何かよく分からない行事に参加したことを船に乗ってそうそう後悔した。
えっ?ハーゲンダッツで買収?
頭がクラクラしてきた、もう何も考えられない……。
「……悪かったな」
「ん〜?」
「お前を巻き込んだことだ」
「あれ、夏バテっていうか熱中症かな。跡部くんが私なぞに謝ってる……。ねえがっくん今の幻聴?」
「幻聴じゃないぜ!」
「じゃあ跡部くんが熱中症?お水あげようか?」
「ちげえ!俺様の謝罪を無下にしやがって」
「ちゃっかり水は貰うんだね」
……にしてもこれからどうなるんだろうか。
夏の日差しは苛烈だし、人も私たち以外いないから海のさざめきが聞こえるだけ。
こんな無人島で私の夏休みは過ぎていくのか。
ここじゃ毎週金曜のドラえもんも観れないし、ポケモンもできないし、そもそもピアノだって弾けないじゃん!
夏休みの宿題は知らない。
「なまえちゃん、大事なこと忘れてへんか?」
「ただいまみょうじなまえは夏バテにより忍足侑士の声を認識できません。繰り返します。ただいまみょうじなまえは……」
「言うとくけどなまえちゃん、女子一人やで」
「繰り返します。ただいまみょうじなまえは夏バテにより……ん?」
「ようやっと聞いてくれたな。
なまえちゃん、女子一人やで」
忍足くんが意味不明なことを言っている。
冗談は変態とこの焼けるような日差しだけにしていて欲しいものだ。
「え?何それどういうことなの?そんなこと聞いてないぞ何言ってるの?忍足くん熱中症なの?水あげるよ?」
「なんでペットボトルを頭上にもってくるん!?」
「クソクソなまえ!水は大切にしろよ!」
「岳人は俺を庇いや!」
確かに……見た感じなんか色んな中学校の人がいたな。船内だと夏バテで死んでたからあまり見かけてないけど。
あれ?そういえば今辺りを見回しても男子ばっかじゃね?
「跡部くん」
「何だ?」
「何で男子しかいないの?」
「暑さで頭可笑しくなったのか?ほら水でも飲め」
やっぱり私は幻覚を見てるのか?
実際跡部くんの目には女子が映ってるのかもしれない。
水をごくごくと飲んで、暑さで働かない脳を冷却。
「……跡部くん」
「何だ?」
「何で男子しかいないの?」
これなんていうイザナミ?
「もう手遅れだったかお前の頭は」
「跡部くん万華鏡車輪眼使った?」
「何わけわかんねぇこと言ってる!お前、今は合同合宿の手伝いに来てるんだろうが!」
「え、そうなの?」
「てめー……みょうじ!ハーゲンダッツ食えるとしか思ってなかったんだろ!」
この夏開催、テニス部合同合宿。
回復アイテム、ハーゲンダッツ無し。
状態異常、夏バテ。
満身創痍で始める恋愛サバイバルRPGの間違いであった。
2014.07.16
夏休み企画です。
基本パラレルワールド。
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