『明日大阪に行くことになりました』

『でも一緒に行く両親がそのまま大阪で仕事なので、私はぼっちです』

『明日暇なら、大阪観光に付き合ってくれないかな?』

白石からそんなスクリーンショットが届いた直後に電話が鳴る。

「謙也、俺、俺っ!」
「言いたいことはわかる」
「なまえちゃんに付き合ってくれって」
「観光に付き合ってくれってだけやろ!」
「なまえちゃんとデート!」

みょうじが誘ったのは白石だけ。理由は不明。
大した理由はない……と思いたいが、困ったことにこのみょうじには数日後にパリに行くという事実がある。意味深な誘いにしか見えない。少なくとも、二人がデートに行くと聞いたメンツにはそうとしか思えなかった。





「おまたせ白石くん。待った?」
「全然待ってへん。それよりなまえちゃんは新幹線座りっぱなしで疲れたやろ」 

前日にアポをとったのに、白石くんは私を快く出迎えてくれた。こんな人混みの中でも目立つ白石くんはおのずと女の子の視線を集めている…と、白石くんの目の前の私に視線を移して残念そうな顔をしている。それから鼻で笑う人もいる。ひどいな!

「ほななまえちゃん、行こか」
「うん」

白石くんが私に手を差し出してくる。これは今日一日の給料を前払いしろ、ということなのか?まぁ白石くんは信用できるしいっか。

「はい白石くんにお土産」
「えっ」
「今日一日のお礼」
「お、おおきに」
「泣くほど嬉しかった?良かったー」
「うん……なまえちゃん、迷子になったりしたらあかんで」
「大丈夫だよ。白石くん格好良くて目立つからはぐれたりなんてしないぞ」
「エンジェル……!」

前から思ってたんだけど、そのエンジェルってエクスタシーの派生?エクスタシーのインパクトが強すぎてイマイチだと思う。でも気を悪くさせるといけないから黙っておこう。
そんな白石くんは一瞬固く拳を握って気合を入れたっぽい。

「さ、なまえちゃん。どっか行きたいとこある?どこでも連れて行くで!もちろん俺の家もウェルカムや!」
「白石くんの家もいいけどたこ焼きとお好み焼きが食べたい」
「せやな!いっぱい食べる君も好きや!」
「あ、ありがと。あ、でもあれだ。先にポケセンに行きたいです!」

ポケセン!本場のたこ焼き!日本を出る前に楽しめるなんて幸せ者だ。ポケモンとたこ焼きやお好み焼きを生み出した日本と大阪の文化には心から感謝!そして、私に大阪観光の為の潤沢な資金を提供してくれたお父さんにも感謝だ!配信ポケモンも受け取るぞ!




俺はなまえさんと部長のデート(どうでもいい)をつけることになってしまった。謙也さんには何か奢ってもらわんと割に合わない。
その謙也さんは、物陰から部長となまえさんの様子を伺うのに夢中や。他野次馬二人を添えて。

「謙也さん、そんなにあの人とデートしたかったんすか」
「だからそんなんちゃうわ!俺は白石がみょうじに変なことせんか心配なんや!」
「蔵クンに限ってそんなことないと思うわよぉ」
「みょうじの前では割ときっちり隠しとるやろ?」
「いや、アイツの中ではプラトニックな白石と邪な下心の白石がせめぎ合っとるねん……株価より変動が激しいんや。それに、みょうじの奴……何やパリに行くんやろ?」

謙也さんが寂しそうな顔をする。俺もなまえさんから聞いた時はびっくりした。突然パリに行く言い出すから何かイベントでもあるんかなって思ったわ。

「謙也クン……」
「謙也、元気だせ。俺と小春の傑作漫才見せたるで!な?」
「変な同情せんでええ!で、俺が言いたいのはパリ行きを知ってる白石がみょうじに何するか分からんってところが怖いっちゅー話や!」
「それって蔵クンがなまえちゃんに告白してできちゃったらどうしよって心配?」
「そそそんなんちゃうわ!ただ白石があの変な女に引っかからんかが心配で……」

さっきと言っとることが違うやん。
ちゅーかこの監視団めっちゃ目立つな。幸い部長は浮かれてるしなまえさんはもとからあんなんだからバレてへんみたいやけど。

「まあ、主にみょうじのせいであの二人がまともにデートできる気はせーへんけどな」
「ユウジさんと意見が合うとは思わんかった」
「そうかしら?」


……などと、つい10分前までそんなことを考えてた俺やユウジ先輩は見通しが甘かったと言わざるをえない。
あと疑問符をつけた小春先輩は何だかんだ流石や。

「なまえちゃん」
「どうしたの……わっ!?」
「めちゃ可愛いで!ピカチュウカチューシャ」
「おおおー可愛い!ピカチュウ耳だ!」

何やカップルしてるやん。
これには謙也さんもユウジ先輩もみんな絶句しとる。俺も驚いた……お、久々に配信ポケモンゲットや。たまには来るもんやな。

「意外にカップルしとる……」
「ほーらやっぱり」
「白石やるな……って財前!何お前もお前でポケセン楽しんどるねん!」
「何だかんだ来る機会あらへんでしょ。八つ当たりみっともな」
「俺も小春とああいうことしたい!」

部長となまえさんは誰から見ても普通にカップルしてる。店のど真ん中でイチャイチャしとるようにしか見えへん。なまえさんにはそんな意識あらへんやろうけど実際イチャついてる。

「今なら10万ボルト出せる気がする!」
「俺はもう既になまえちゃんに痺れてるで」
「でも尻尾ないとアイアンテールは無理かなー」
「俺には尻尾も見えるで!」
「えっこのカチューシャそんな機能ついてるの!?」

なまえさんがあるはずもないカチューシャのハイテク機能に騒ぎ出す。今はそれよりテンションの高い部長となまえさんと違ってみるみる下がっていくテンションを携える謙也さんの方が……ちょっとおもろい。

「みょうじ、ほんま何で白石誘ったんやろな」
「そんなに気になるならあそこにいるピカチュウ頭に聞きに行けばええじゃないすか」
「そんなんできるわけあらへんやろ!」
「まあまあ謙也クンは光クンみたいに肝は座っとらんのよ」
「おい!」
「小春に慰めてもらっとるやと!?」

こっちのテンションとボリュームも上がりだして目立ってきた。こういうとき俺は他人のふりをすることにしてる。効果的や。
バレてへんかなと思ってなまえさんと部長の方に視線を戻すけどもうおらん。
探せばレジの列に並んどるのが見つかった。

「部長も何ピカチュウカチューシャつけてんねん」

恋すればこんな店の中でもあんなカチューシャつけられるんやな。俺には分からへんわ。




2016/9/18修正

わあああああああユウジごめんんんんん
油になってたあああああああああああ
呼び方も修正しました。原作の記憶が薄れゆく…実家に原作全巻あるんですがうちの父親がはまっており放してくれません。新テニも購入しているらしい(母情報)。


ポケセン京都に洞窟入ったときのズバットくらいの出現率でいます。ポケモン分からない方にはいつも土下座です…ガンダムとかそういうのも含めて

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