前回のあらすじ

悪の数学教師藤田と戦うなまえちゃん!藤田の攻撃「因数分解」に対抗する術もなく、命からがら逃げ込んだ先には無駄にイケメンなジャイアンがいた!どうするなまえちゃん!

「ジャイアン……」

そう、逃げ込んだ部屋にいたのはジャイアンだった。木こりの泉にでも突き落とされたのだろうか?
だったらその木こりの泉は故障しているのかもしれない…綺麗なのは外面だけだ。
というかこんなリアルジャイアンいるのかと思って冷静に考えたら引いた。
一人称俺様って……ドン引きしすぎて無意識に体も後ずさってしまったよ。

「分かったら謝罪するんだな。そうしたらこれから後のことを考えてやってもいいぞ、猛禽類女」
「え?猛禽類女?」

初対面の女子に対してそんなこと言うのか!?
何なの猛禽類女ってさ!

「ハヤブサ飼ってるだろ」
「ハヤブサなんて飼ってないよ」

何言ってんだこいつ……?

「昼休みにハヤブサに餌付けして話してやがったのは誰だ」
「!?私とワトソン君の逢瀬を見たの!?」
「しかも名前付けてんのか」

呆れ顔のジャイアンはため息を吐いて、席で踏ん反り返った。なんだこのジャイアン。
踏ん反り返っている様がただのイケメンだ。

「でも人違いでしょ?ワトソン君ハヤブサじゃないもん。カンムリクマタカだもん」

踏ん反り返ったジャイアンの鼻をあかしてやろうと衝撃の事実を突き付けてやる。

「カンムリクマタカ……だと?」

ジャイアンは凍りついた。そして、その手は近くにあった携帯に伸びて、どこかに電話を掛け出した。

「今すぐ救急車を頼む」
「え!?ちょっとなんで!?」

ジャイアンの手から電話を取って通話を切る。
尚もジャイアンは信じられないという顔をしていた。

「前……カンムリクマタカについて調べてみたのか…」
「写メってお兄ちゃんに見せたらカンムリクマタカって」
「騙されてんじゃねーか……」


※カンムリクマタカ
アフリカの熱帯雨林に生息。体長およそ90cm、翼を広げると2m。
猛禽類最強と名高い。


「えっ、ハヤブサなの?コナンの白馬のタカにあやかってワトソン君ってつけたのに…」

親友がタカではなくてハヤブサだったなんて!ごめんね……私あなたのこと全然分かってなかった…!

「おいバカ女取り敢えず俺様に謝れ」
「ちょっと!私今沈んでるのに追い打ちかけないでよ!」

ジャイアンは根は良いやつなのにこいつは無慈悲なやつだ。木こりの泉やっぱり壊れてるんじゃないのか?中身に問題があるぞ。

「ほう……今の自分の状況、分かってるのか?」
「何が?」
「俺様は分かってるぜ?今の俺様自身の状況を」

ニヤリと笑う外面だけ綺麗なジャイアン。
手元には校内放送用のマイクである。
職員室で同じものを見たぞ。

「俺様は今、みょうじなまえという生徒が数学の藤田から逃げて生徒会室に隠れていることを知っている」
「うん」
「因数分解ができず補習から逃げている、というのも掴んでいる」
「……うん」
「そして藤田を因数分解(物理)してやろうかと言ったのも聞いた」
「……そうですね」
「そして、俺様の手元には校内放送用のマイクだ」

おい、そういうのはよせよ……。

「は、話せば分かる……君が根は良いやつだということは知っている。ここは友好的に、かつ平和的解決をしようじゃないか」
「言い訳は補習で藤田が聞く」
「アッー!」


ジャイアンがポチッと地獄行きのボタンを押した。

2016/08/27修正
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