「失礼します!突然ですが匿って!」
ノックもなく乱暴にドアが開いたのと同時に女が入ってきた。その女はまさしく数時間前に見た猛禽類女だった。猛禽類女はドアを乱暴に締めて鍵を掛け、ドアに張り付いて耳をそばだてている。
「おい、テメー何勝手に」
「うるさいやい!ちょっと静かにして10円あげるから!」
……は?
俺様に10円やるから黙っとけだと?
「くそぉ……藤田め。何が因数分解の補習だ……お前の方こそ因数分解(物理)してやりたいぜ!」
黙れと命令しておいて何をテメーは割と大声で喋ってやがる。
「おい、そこの女。こっちに来やがれ」
「だから!藤田が行くまで黙っててよ!分からず屋さんね!」
やっと俺様の方を振り向いたかと思うと青筋を立てて叫びやがった。……こいつ俺様が誰だか分かってないのか?
「おっおっ……藤田行ったな」
「行ったか。じゃあこっちに来やがれ」
「はーい匿ってくれてありが……ぎゃあ!」
猛禽類女の頭部に俺様が投げた本(忍足が置いていったケータイ小説とかいうやつ)が直撃した。
「目が!目がァァ!」
「おいテメー、猛禽類女!俺様のことを随分コケにしやがったな」
「目が!目がァァ!」
「責任取って貰うぜ」
「目が!目がァァ!」
「うるせえ!目なんか当たってなかったろ!いい加減やめてこっち来い!」
怒鳴ると猛禽類女はサッと目を押さえていた手を下ろした。本当に何だこいつ。
「何でしょう」
「テメー散々な態度取りやがって……さっき俺様に10円やるから黙れだの好き勝手言ってくれたな?」
「10円は嫌なの?ケチだなあー……じゃあ100円でいい?」
「10円も100円も変わんねーだろうが!」
「うわ!もしかしてカップ麺の相場250円くらいですっていうタイプなの?うわー」
「カップ麺って何だ……!?じゃねえ!そんな話はしてねえんだよ」
俺様がペースに飲まれているだと!?
この猛禽類女、つくづく腹立つ奴だぜ……!
「取り敢えず、俺様に謝れ」
「え?何で謝るのさ」
「態度が悪いからな」
「ジャイアンだ……」
猛禽類女が一歩後ずさりをした。
ふっ、そうやって俺様を畏怖しておけばいいものを。
2016/08/27修正
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