日吉くんと一緒に食堂に行こうとしたけど、なんかめっちゃ無言で怒ってた。一体どうしたんだと聞いたのに「あんたには関係ないでしょ」と拒絶されてしまった。ここで大事なのは引き下がらないこと。日吉くんとの正しいコミュニケーションはしつこく絡むことだ。

「ねー、日吉くんそんなつれないこと言わないでよ」
「鬱陶しい煩わしい」
「日吉くんってば〜実はお姉さん貴方がツンデレだって知ってるんだ!」
「……は?」
「すみませんでした」


因みに日吉くんの機嫌が本当に悪いと失敗します。


「日吉くん珍しく機嫌悪かったなぁ……一体どうしちゃったんだろ」
「アイツいつも機嫌悪そうだろぃ」
食堂にどんより暗いオーラを纏ったみょうじがやってきたから捕まえて席に座らせた。
なんか日吉とあったらしい。
つーかこいつが人にベタベタする一面持ってるなんて知らなかったわ。俺がみょうじに不本意だが気があるせいかもしれねー。ちょっとイラつくわ。

「無愛想なだけ!ツンデレなの!ああもう、仁王くんベタベタすんのやめろよ暑苦しい」
「……みょうじは贔屓を包み隠さねーな」

仁王も日吉みたいに冷たくすればいいんじゃね?

「なまえちゃんが可愛いのが悪いんじゃ」

仁王は会って間もないみょうじのことをすげー気に入ってるらしい。面白い奴なのは分かるけどいくらなんでもベタベタしすぎだろぃ。

「ほうお主意外に分かるのう。因みにどんなとこが可愛いのかな?」
「あからさまに機嫌良くしてんじゃねーよぃ」
「ミニブタみたいで可愛い……って痛いぜよ」
「は?何言ってんの?いい眼科紹介しようか?ん?」

みょうじは笊蕎麦を持ってた箸を止めて仁王の髪の尻尾を引っつかんだ。これじゃあもうただのチンピラだ。俺、今なら間に合うぞ……早くみょうじに冷めろぃ。

「それが許されるのはブンちゃんだけでしょうが!」
「俺に飛び火させんじゃねーよ!誰がミニブタだよぃ!」
「さっきデータ見てたら丸井ブン太……身長162cm体重62kgってあったから意外に恰幅が良いんだなって……」
「53kgに訂正しろぃ!」

もう20.5巻とか昔の話だろぃ!誰だそんな嘘情報載っけた奴は!俺が犯人を聞き出そうとする前に、みょうじが仁王を問い詰めだした。

「それより!私のどこがミニブタだって!?どこからどう見ても凛々しい猛禽類じゃん!」
「間違ってもアヒル辺りじゃろ」
「うるさい!少なくともミニブタじゃないし!なんでミニブタなの!?」
「そういえば仁王、『ベイブ』観たって言ってたな」
「そうじゃ。なんかなまえちゃんの雰囲気がベイブに似とる」
「みょうじがあんな健気なブタに見えるかぁ?フェルディナンドの方だろぃ」
「間違ってもアヒルってフェルディナンドのことだったのか……」

すっかり脱力したみょうじはため息を吐いて椅子の上に体育座りをした。
そんなにブタが嫌なのか。
いや……みょうじの奴、確かにチンピラみてーな一面はあるけど意外に笑ったりしたら可愛いと思うし。ミニブタか鬼太郎か知らねぇけど黙ってたら可愛いと思う。
絶対口に出さねーけど。

「おいおい、元気だせよぃ。ブタも可愛いじゃん」
「つまりなまえちゃんは可愛いってことじゃ。……ポカブみたいで」
「ブタから変わってねーじゃん」
「はぁぁ……」

みょうじはまた深くため息を吐いた。肩に置かれそうになった仁王の手をパシリと払い除けて、かつ仁王の存在を無視して俺に言った。

「ねぇ、結局なんで日吉くんあんなに機嫌悪かったのかなぁ?」
「お前今までのやりとりの4分の3くらい無視したな」

……変わってないのはこいつのおかしい思考回路だ。それと呆れても冷めない俺もやっぱおかしくなってると思う。


2016/11/01修正

ベイブを観てる仁王とか萌える。
日吉くんの話はどこまで引き摺るかは気分次第です。
なんか丸井くん恋してるみたいになってるんですが多分今までケータイでやりとりしてて気になる女子になってきた中学生のノリ。丸井くんのその辺の話は番外で出します(決意)
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