昼メシを食べていざ練習!と張り切ってやったら副部長にすげーしごかれた。あちこち擦り傷だらけで打撲したっぽい所もある。副部長は「たるんどる!」と一喝して……多分青学の部長んとこ行ったな。
可愛い後輩をほったらかすなっての!
「おーい切原くん」
「みょうじ先輩」
コートで寝っ転がってると神の子Tシャツを着たみょうじ先輩が来た。今朝知り合ったばっかなのにこの親しみやすさは何でだろ。
「真田くんの通報を受けて手当に参上した」
「副部長が?」
「うん。切原くんが怪我してるから看てやってくれ、ってさ。良い先輩を持ったね」
副部長ツンデレかよ。指示されて来たらしいみょうじ先輩はしゃがみ込んで救急箱を傍に置いた。
「えーと、おでこと膝と腕と……結構怪我してるね」
……こう、ジロジロと見られるとはずい。
「ちょっ、あんまり見ないで欲しいんすけど」
「手当できないじゃん」
「大体……ちゃんと手当できるんすか?」
「もちろん大丈夫!」
俺の傷を見ながら自信満々なみょうじ先輩。
「私の手刀で治らなかったテレビはない」
「俺テレビじゃないっす!!!」
「あはは、ジョークだよジョーク」
今の目、マジだったって!副部長の次はマネージャーに追い討ちってシャレになんねーし。親しみやすいっつっても、この独特のテンションには付いていけそうにないな……。
「じゃあじっとしててね」
「染みます?」
「嫌ならここんとこ斜め45°角度つけて手刀入れるよ」
「アンタやっぱ本気でしょ!?」
冗談か本気か分からない笑顔を浮かべながらみょうじ先輩は案外手際良く消毒液を綿の球に含ませて、俺のおでこに近付けてきた。
それと同時にみょうじ先輩の顔まで近付いてきた。
「せ、先輩近いっす!」
「ズレるからじっとしててよ」
……よく見ると先輩ちょっと可愛いかもしれねー。
いや、待て俺!静かに怒る柳先輩の開眼・副部長の鬼の形相・部長の神の子スマイル(闇)を思い出して落ち着くんだ俺!しかも柳先輩ならぜってー『男が憧れるシチュエーションにときめいているだけだ』って言う確率200%だって!
あああ!ハヤブサがペットのクセにシャンプーのめっちゃいい匂いする!
「切原くん、目瞑ってなんかワナワナ震えてるけどそんなに染みる?最早怒ってる?」
「染みるっす……」
シャンプーの匂いが。
相手は副部長の匂いに興奮する変態なのに!ハヤブサがペットの変な女なのに!俺はチラリと変態で変人だけど、ちょっと可愛くていい匂いするみょうじ先輩を見る。もう俺の腕の手当てに入ってた。
鼻歌なんて歌ってるし。
女々しいかもしんねーけど、
俺ばっかドキドキしてズルいって。
「みょうじ先輩ズルいっすよ……」
俺の声が聞こえたらしい先輩はすげー勢いで顔を上げた。
「私だけスイカまるごと食べたのバレた!?」
……それはマジでズルい。
2016/9/16修正
スイカは忍足の行為のお詫びに謙也に貰ったという。
赤也めっちゃ中学生で大好きです。
経験上、今の中2男子ほんとこんな感じ。
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