幸村くんからアンニュイな神の子Tシャツを頂戴し私は青学の練習場へと足を運んだ。神の子Tシャツの威力は絶大であり、途中出会ったがっくんを怒らせ日吉くんを呆れさせた。私は何もしてないのに。
「クソクソなまえ!久々に会ったら何で立海生になってんだよ!」
「えっ、立海生ってこのTシャツ着てんの?」
「やはりみょうじさん……立海をも手玉に取るんですか」
「そう!私の美貌で王者立海もイチコロ!」
「そんなもの生まれ持ってないでしょうが」
「水木先生に失礼だぞ」
「自分で自分を鬼太郎扱い……」
日吉くんは更に呆れた。おっと、これは自分の所為みたいだ。その間もがっくんは怒っている。こう理由もなく怒るのは私に会う前に何か機嫌を損ねることがあった証拠だ。
「何でがっくんそんなに不機嫌なの?」
「うるせー!菊丸の奴!」
「菊丸誰よ」
「だいたいお前もだっつーの!何だそんな変なTシャツ!立海生になったのかよ!」
「やっぱ立海ってみんなこのTシャツ着てるの?あのかっこいい柳生くんですらユニフォームの下にこんなアンニュイなTシャツ着てんの?」
「同じ問答を繰り返さないで下さいよ。みょうじさんは大体、手伝いに来たんでしょう。青学の所に行かなくていいんですか」
「あ、そうだ。青学の所へ挨拶回りを」
「何だよ!次は青学に転校すんのかよ!」
「そんなわけないでしょう。もう向日さんは黙って下さいよ」
日吉くんががっくんを引きずって行こうとするががっくんは小柄の割にしぶとい。古武術使いの日吉くんに大して粘っているようだ。
日吉くんは本気になれば張っ倒して連れて行けるだろうに……先輩だから気が引けるのね。
あれ、じゃあ私が昔日吉くんに張っ倒されたのは一体……。
「待てよなまえー!」
「みょうじさん!行って下さい!」
「うんありがと日吉くーん」
私は目的の青学のコートへ向かうことにした。
そういえば……と叫びつつもどんどん遠くなるがっくんを背後に私は考える。
青学テニス部……青春学園男子テニス部。
何か聞き覚えがあるんだが。
確かあっくんがそこの1年生に殴り込みをかけたってタカさん―――タカさんはあっくんと知り合った小さい頃から私のお友達である―――から聞いた。
それを聞いた私は『年下にww殴り込みwwあっくんww』と笑った覚えがある。
てかあっくん何でテニス部に殴り込みかけたんだっけ?あれ、あっくんってテニス部だったっけ?
タカさんはテニス部だったはず……ってタカさんもしかしてこの合宿に参加してるのかな!?
「バーニンンンンン!」
私は走り出した。
お友達のタカさんに会いに。
タカさんのお寿司を食べに。
「!?」
「みょうじさんどうしたんだ……」
「なんか青学の河村みたいだったな……」
真夏の炎天下だが練習日和だというのは変わりない。
合同合宿先に大幅な変更があって南の島から突然何もない田園風景が広がる場所になった。本当に突然だった。手塚は跡部に理由を聞いたそうだが「1人合流する70代がいる」とだけ言っていたそうだ。
……どんなおばあさんなんだろうか。
「手塚は……」
「どうした不二?」
「跡部が言っていた70代の人ってどんな人なんだろうね……」
「跡部が数学を教えているらしいということだけしか知らないが……」
「え、それは普通逆じゃないの?」
「(数学が苦手なら)当然だと思うが」
「そんなものなのかな……」
「それにマネージャー業をやるのに73でも関係ないだろう」
「いや、一般論としても大いに関係あると思うよ」
手塚とここまで意見が合わないのは初めてだ。まるで意見が合わないというよりすれ違っているみたいだ。
「グレイトオオオオ!」
そんな中でもタカさんはいつものようにパワフルなラリーを桃と続けている。
「まだまだぁ!」
「バーニンンンンン!」
「ちょっ、この練習は波動球なしでやろうって言ったじゃないっすか!?」
どうやら熱くなったらしいタカさんが波動球を放ったらしい。
だけど、その波動球を受けたのは桃ではなかった。
「タカさぁぁぁ……ぐぎゃっ!」
波動球は突然走って現れた誰かに直撃した。
「えっ、ちょっとアンタぁ!大丈夫かよ!?」
「バァー……ニン……タカさん……」
「タカさんのファン!?にしてはやること過激すぎるって!」
「大丈夫かい!?」
近づくと『神の子』ととてもアンニュイな字でプリントされたTシャツを来た女の子だった。……そしてなぜか探検バックを提げている。
「波動球をまともに食らっていたな…意識はあるようだが……ん?」
同じく彼女を心配してやってきた手塚が目を回している彼女を見て怪訝な顔をしている。
それにつられて僕も彼女を見る。
……少しだけ見覚えがある気はする。どこかで会ったのかな?
「どうしたの?手塚」
「彼女は……まさか?」
「何この人大丈夫なの?」
「今のすっごーい痛そうだったにゃ!」
「とりあえず救急車を呼んだ方が……!」
「俺が呼んできます」
突然の惨事にあの越前もやってきた。大石や海堂は救急車を呼ぼうとしている。懸命な判断だ。
「今の……」
一方で波動球を食らわせたタカさんも怪訝そうな顔をして近付いてきた。そして彼女の顔を見るとはは、と笑った。
「やっぱりなまえかぁ」
「波動球食らわせといて何でそんな軽いんすか!?」
「タカさん知り合い?」
「ああ……俺の幼馴染なんだ。
運動神経はちょっと悪いけど、そこら辺の大型トラックより頑丈だから大丈夫だよ」
「そんなの俺の知ってる女の子じゃにゃーい!」
「でも……」
「大丈夫だよ。なまえ〜、今日はなまえの好きなキハダマグロ尽くしだ!」
何故そこでキハダマグロをチョイスするのかよく分からないが効果があったみたいだ。
彼女の手がピクリと動いた。
「亜久津はいないから1人で食べられるぞ〜」
「キハダマグロバァーニィン!」
……彼女もすごいがここまでさせるキハダマグロもすごい。
2016/9/16修正
乾はデータ取ってるんだ。
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