私はパーティメンバーに武士とワカメ使いを加え、立海の長に魔王を倒す術を聞くため旅を続けた。数百メートルという何とも短い道中ではあるが、第一村人を発見!

「柳せんぱーい!」
「随分大所帯だな。それと……」

第一村人…ではなく王子様を発見してしまったようだ。何を隠そうこのみょうじなまえの好きなタイプは大人な知的イケメン、苦手なタイプはエロかったり腹黒かったりする人である。
彼は、確か柳くん。背が高い彼から……見られてるのか?目閉じてるからよく分からないんだけど、前見えてる?

「君がみょうじなまえだな。氷帝学園中3年D組。友人や周囲からは『奇行種』『タミフルなまえ』『リアルのだめ』などと呼ばれている。今年の春から突然テニス部と関わり合いだし現在に至る。好きなものはドラえもん、ポケモンなどのアニメ、または特撮……昭和のウルトラマンと様々。特技はピアノや作曲。その筋では天才、奇才とも呼ばれている。ペットは校舎裏のハヤブサ。尊敬する人物はエリック・サティ……」

ここ最近私のプライバシーの権利は保障されていないのだろうか。

「……よく知ってるね」
「丸井や……その筋からの情報だ」
「丸井くんはともかく何の筋?」
「聞いていた通りかなり興味深い女子のようだ。まさか探検バッグを提げてやってくるとは……想定外だ」
「探検バッグ提げてくるの想定する方が難しいと思うよ」
「この名前欄は跡部の筆跡である確率100%……跡部はみょうじに対し過保護と思われる」

探検バッグを見ると確かに美麗な筆跡で『みょうじなまえ』と書いてあった。ますます小学生扱いされているようで惨めだ。

「幸村はどうした?今年の氷帝の臨時マネージャーに会いたいとしきりに言っていただろう」
「ああ……幸村ならみょうじを待ちきれず跡部の所に行ってしまったんだ。入れ違いに気付いてすぐに戻ってくるはずだ。それについてはみょうじ」
「む?何でしょうか柳くん」
「覚悟を決めておくことを勧める」

ふっと微かに笑った柳くんは大変かっこ良かったのに、発言は大変物騒だった。

「今のどういうこと?覚悟って?」
「幸村部長はずーっとみょうじ先輩に会いたがってたんすよ。だからじゃないっすか?つーか俺ハヤブサが気になるんすけど」
「そもそも会いたがってる理由が分からないし……そして覚悟って何なの」
「俺と柳のせいで、幸村くんみょうじに興味津々でさぁ。ま、頑張れよな」
「跡部さんにもストーカーされて部長の玩具なんて終わってるっすね。そんなことよりハヤブサって何すか?」
「幸村くんってそんなにヤバイの?」
「ヤバイってもんじゃないぜよ。なまえちゃんが引っ張ってきた真田なんか幸村の前じゃ風の前の塵に同じじゃ」
「武士を塵にしちゃうの!?」
「俺の話聞いてくださいよぉ!ハヤブサって何すか!?」
「ハヤブサも知らないの?図鑑見てくれば?」
「みょうじだってカンムリクマタカ(※鳥類最強)と間違えてたんだろぃ」

私は探検バッグのバインダーに挟んだ資料を見る。気のせいか、幸村くんの写真から伝わるオーラが先程の数倍物々しく感じる。

「幸村か。みょうじが来ているぞ」
「やあ、やっと見つけた」
「!?」

ブンちゃん仁王ワカメ使いを集めて幸村くんについて聞いているととうとう幸村くんが降臨なさった(BGMインペリアルマーチ)。
私は並んでいた柳くんと真田くんの後ろに逃げ込む。

「なまえちゃん、赤也の時は俺の後ろに隠れてくれたんに」
「みょうじが背の高さで選んだ確率98%」
「柳くんと真田くんが私のウォールシーナとローゼ」
「3強を壁と巨人扱いっすか」
「ははは。やっぱり面白そうな子だね。君がみょうじさんだよね?よろしく」

美人、といった言葉がよく似合う人だ。真田くんとは別の意味でとても同じ中3とは思えない。幸村くんは私に手を差し伸べて握手を求めてくる。

「は、はじめまして……」

幸村精市くん……彼にオノマトペを付けるならゴゴゴかズズズかコォォ……のどれかである。それぐらい彼から発する物々しいオーラは異常だ。こんなに爽やかな顔しているのに。
立海の長自身が魔王だったようだ。

「俺の名前は……」
「いえ存じあげております幸村様」
「みょうじの奴いやに低姿勢だな」
「誰にでも同じ目線って感じだったのにのう」
「はは、様なんてやめてよ」
「イエス!ユアマジェスティッ」
「ちょっとぉ先輩!」

私の服を引っ張ってきたのは切原くんであった。ちょっと目が充血してるのはどうしてか分からないけど彼はどうやら怒っているようだ。私は彼を怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。3強?多分柳くんと真田くんと幸村くんを壁や巨人扱いしたのを怒っているのだろうか……。

「ハヤブサがペットってどういうことすかー!」
「そこなの!?」

切原くんは2年生ながらやっぱり鍛えられてるなぁと思った。



2016/9/12修正

最後やや投げやりだけど赤也だから許されると思ってます。
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