「忍足くんの部屋って案外普通だね」
「自分どんな風に思ってるん」

所は変わって忍足家。私は忍足家に連行されてしまった。曰く謙也くんと白石くんは今日は忍足家に泊まるのだとか。
私がいる理由?
帰ろうとしたら3人に連行されたからだ。ご馳走になるとかそんなんで釣られたわけでは断じてない。

「みょうじ何しとんねん」
「ベッドの下にエロ本とか隠してないかなと思ってさ」

忍足くんがお母さんと話している間、謙也くんに連れられて忍足くんの部屋に行った。部屋を開けるとベッドがあったのでついつい探ってしまった。これ何時もの癖なんだよなぁ。

「おい女子だろお前!」
「いや、中学生男子ってベッドの下にエロ本を隠すのがステータスなんでしょ?」
「誰にそんなこと教わったんや自分……」

いや〜、健全なアニキがいると妹も触発されて困る。

「忍足くんは人妻NTRが好きそうだけど従兄弟はどうなの?」
「なっ!?」
「謙也くんはあれか、ラブラブなJKもんか」
「くっそみょうじ!俺の映画館でのトキメキ返せや!」
「映画観てときめいてたの?」
「映画やないわ!」

何もないベッドの下を覗いていると白石くんが私の両腕を引っ張って、屈んでいた体がまっすぐになった。まるで赤ちゃんじゃないかよ私。

「なまえちゃん……あかんで。俺、なまえちゃんが忍足くんの性癖に触れて穢れるの耐えられへん」
「白石はっきり言い過ぎやで!」

乱暴にドアを閉めつつ忍足くんが部屋に入ってきた。
開口一番、私は忍足くんに問い詰める!

「貴様!エロ本を何処に隠した!」
「そりゃあ……絶対見つからんところに決まっとるやろ。今頃……」
「忍足くんご飯まだー?」
「ご飯はまだや!なまえちゃんは自分から始めた茶番を強制終了させたらあかん!」


一通りツッコミを終えた忍足くん曰くご飯はまだらしく、何かして待とうとのこと。私は忍足くんのエロ本探しを提案したが却下された。しかも白石くんに。
「なまえちゃんが穢れる!」って、私は確かに純真無垢だけど白石くんは私に何かクリーンすぎる純真無垢を想像してないだろうか。
その白石くんの提案で、基本に忠実にトランプでババ抜きになった。配られて早々私の手持ちにひょっこりと顔を出す不気味なピエロ。

「なまえちゃんの好きなタイプは?」

最初のターン!白石くんが私の手札からガードを引くときにそんなことを言ってきた。

「ゴーストタイプ」
「ポケモンちゃう」
「え?違うの?」
「なまえちゃんの好きな男のタイプ」
「知的で大人っぽい人かな」

白石くんは私の目を見ている。彼の手は私の手札のカードを一つ一つ確かめるように動いている。きっと私の表情の微妙な差を見分けているのだろう。それにしてもイケメンに見つめららると照れますね!あ、それ!そのジョーカーを引くんだ!

「ということは年上が好みなんや」

脳裏にはいつぞやの手塚さんが。うーん、やっぱかっこいいわ。

「そうなるね」

白石くんは考えこみながら結局ジョーカーを引いた。カードを見て表情を崩さない、なかなかのポーカーフェイス。

「同い年はどうなん?」

次は謙也くんの手番。白石くんからカードを引くのだがかなーりそわそわしながら私に聞いてきた。

「うーん……微妙かな」
「!?そ、そうなんやな……」

白石くんからカードを引いた謙也くんの顔が引きつった。これはジョーカー引いたな。謙也くんはポーカーフェイスが下手だ。

「せや、それならルックスはどうや?」

早くもお葬式な謙也くんを前に忍足くんがカードを選びながら聞く。みんな私を集中攻撃してるの?なんで?ジョーカー持ってんの明らかに反応から見て謙也くんじゃん!私の反応見る必要ないじゃん……。

「うーんメガネしてる人が好きかな」

忍足くんがカードを引いた瞬間謙也くんのテンションが目に見えて5℃下がった。つまりジョーカーは謙也くんに居座っているのだろう。そしてやや優越感を滲ませた忍足くんが私に手札を差し出してきた。

「俺、なまえちゃんのタイプそのものやん」
「知的メガネじゃなくてただのエロメガネだろ」

手塚さんと忍足くんを並べた図を頭からポイ捨て。ないない。ぜんっぜんないわ。苦笑している忍足くんの手札から一枚引くと、まさかの……ジョーカー!?

えっ、ちょっ一周回ってきたんだけど。つーかさっきの謙也くん何なの!?お前5℃くらいテンション下がってただろ!騙したな!

「なまえちゃん」
「お、お、おう!しし白石くん何でしょうか」

白石くんに声を掛けられて思わず声が上ずる。私がジョーカーを持っていることを悟られてはならぬ!

「俺絶対勝ち取るで」

いきなりの勝利宣言に少々焦る。私の幼馴染に、突然キラキラ輝き出したかと思えば自分の引くカードを予告するすごい男子がいたけどそんな感じの能力?白石くんかっこよくて光ってるけどそれは常時だよね。

「お、おう……」
「特にそこの忍足ーズには負けへん」
「そ……そうか」

私を負かす気はそんなにないのねと思いきや白石くんはジョーカーを引かなかった。
忍足ーズ負かすならジョーカー引いて……

「んんっ、エクスタシー!」

……あれ白石くんそんなキャラなの?一応見なかったことにしよう。

「白石、本気なんか……。なんつーかみょうじが恐ろしいっちゅー話やな」
「謙也くんは私が目玉を父親に持つ幽霊族の末裔とでも言いたいの?」
「髪の毛針といいまだ根に持っとるんかい!」

謙也くんを許すわけにはいかない。今後君の前ではみょうじなまえではなく墓場鬼太郎として振舞わせてもらう。わるいけどおなじ大きさのこぶでおかえしさせてもらうぜ!

「しかし、ライバルが増えるのはあかんなぁ。白石には遠慮願いたいんやけど」

忍足くんが白石くんをちらりと見て言う。ちょっと非難染みた視線だ。やはりこの中で手強いのは謙也くん以外。予想通りか。

「後で忍足くんには残りのライバルについても聞かしてもらおうかな」
「俺はノーカンかい……白石なんなん?何かお前に悪いことでもした?」
「……2人とも何言ってるの?増えるも何も4人しかいないじゃん」

私と忍足くんと白石くんと謙也くん。

そういうと忍足くんと白石くんとは苦笑して、謙也くんにいたってはマジの呆れ顔になった。

「あのなぁ……みょうじ」
「なまえちゃん自分おもろすぎるやろ」
「そういうとこがなまえちゃんのええとこやんな。可愛いで」

白石くんに可愛いと言われちゃ赤面ものだが……それどころじゃなかった。
3人共、なんでその反応なの?ここ4人しかいないよね?キョロキョロと見回しても誰もいない。

手元で小馬鹿にした笑みを浮かべているピエロだけしか見つからなかった。


2016/9/9修正

更新遅くなりました…!
中途半端と感じるかもしれませんが、これで忍足デート編終わり。
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