最近ジローと仲が良い女子がいる。

「ムースポッキー美味しい」
「ん〜、このアメだって美味しいC」

一週間前にあった席替えでジローと俺の間の席になったみょうじは気付かない内にジローと速攻で仲良くなっていた。
実は鋭いジローが懐くんだから変にテニス部に黄色い歓声を上げて盲目的に追い掛けるタイプじゃないんだろう。…いやジローがそうじゃなくても日頃のみょうじを見ていれば分かるが。

クラスでついたニックネームは最近人気の某巨人漫画から「奇行種」だ。
女に付けるニックネームじゃねえ……。

「宍戸も食べなよ〜」
「じゃあこれどーぞどーぞ」
「すまねぇな」

みょうじから一つ飴を貰う。
あんまり見たことがねぇ無色透明な飴だ。じっと見ているとみょうじが気付いたようで塩飴だと教えてくれた。

「熱中症対策によろしくってよ」
「今春じゃねーか」
「地球温暖化は著しいので熱中症もありえると思います」

ちっちっちっ……塩飴みたいに甘い考えじゃ……とみょうじは指を振るが絶妙にイラっとさせる。

「みょうじさん、藤田先生が呼んでたよ」
「え、藤田先生?いやだなぁー……追加宿題とかだったらどうしよ。逃げようかな……」
「みょうじさん、逃げたら補習だって」
「ほ、補習だって!それは嫌だ!」

じゃあね!とみょうじは教室から出て行ってしまった。それからすれ違い様に入ってきたみょうじの友人がジローに話しかけてきた。

「ねぇ、芥川君。なまえが急いでたんだけど一体どうしたの?」

ジローが塩飴を口の中でゴロゴロと転がしながら眠そうみょうじの友人を見て一言。

「えー……なまえって誰?」
「知らないのかよ!?」

まあジローだったらありえる。さっきまで一緒にいたのがみょうじだ、みょうじなまえだとジローに説明してやるとやっとそこで名前を認識したらしい。

「なまえちゃんっていうのかー」
「悪いな。ジローがこんなで」

せっかくジローと仲良くなってんのに、名前すら覚えられてないっつーのは流石に失礼だろ。

「いいよ。多分なまえも宍戸くんと芥川くんの名前すら知らないから」
「は……?」
「だから、なまえは宍戸くんと芥川くんの名前知らないからお互い様だって。ごめんね」

みょうじの方がずっと失礼だった。

2016/08/27修正
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