「なまえさんは跡部さん達と仲良いんですよね」
「なまえさんそんなこと言われるなんてちょっと不本意だよ」
「日吉とも仲良いんですよね。なんだか…なまえさんが、俺だけが知ってるなまえさんじゃなくなった気がして妬けちゃいます」


「……ってチョタくんに言われてしまったんだが、日吉くん。どうすればいいと思う?」
「それを俺に相談しますか?」
「直感で決めたんだ!すまんな」
「だろうとは思いましたよ」

音楽室に呼び出されて早々これだ。鳳がみょうじさんに好意を寄せている以上にみょうじさんが何の躊躇いもなく俺に相談したことに驚愕した。しかも、よりにもよって鳳に嫉妬されているようである一人の俺にだ。

「チョタくんのあんな悲しそうな顔見たことなくてさ……悪いことしちゃったみたいな気分。別に日吉くんと仲良いって思われてることは大歓迎なんだけどね?」
「俺がそれに関しては不本意です」
「またまた照れちゃって」
「照れてません」
「ツンデレな日吉くんも好きよ」
「……そういうのが鳳を煽ってるんだと思うんですが」
「えっ、まじ?」

どの辺がいけないんだろう?とみょうじさんは首を傾げる。

「ああ見えて鳳は嫉妬深いタイプですからね」
「そうなのか。ということは、チョタくんって宍戸くんも好きだよね?宍戸くんもこういう経験ありなのかな?」
「いつになったらその鈍感というかバカは治るんですか?」
「なんか暴言返ってきた!?」


感性は人の数倍だとは思っていたが、ただの思い違いだった。鳳はこんなバカのどこがいいのだろうか。理解に苦しむ。


「いいですか。鳳は貴女が……」

言おうとしてつっかえた。
俺の為にもこれ以上言ってはいけない気がする。

「おーい?日吉くん?」
「……本当にバカですね」
「私何もしてないよ!?」

……鳳の為にも自制心が働いて、咄嗟にみょうじさんに指摘してしまった。みょうじさんは馬鹿なのは誰が見ても自明。間違いではないから罵倒じゃない。指摘だ。

「……自分だけが知ってるみょうじさんがいなくなったのが寂しく思っているのなら、作ってあげればいいんじゃないですか?」
「というと?」
「何か秘密を教えてやるのは?」
「おお!なるほど!」

日吉くん頭良いね!流石!とみょうじさんは笑う。随分能天気な喋りに思わずため息が出る。

「それで?何の秘密を教えるんですか?」

自分から鳳と秘密を共有するように提案しておいて、思わず自分でも馬鹿な質問をしてしまった。

みょうじさんは口元で人差し指を立てる。

「今はチョタくん以外の人には内緒!」

いつも突飛なことしかしないくせにこういう時ばかり予想通りになる。だからこの人は嫌いなんだ。


「おーいチョタくん!」
「なまえさん、どうしたんですか?」
「なまえさんはね、チョタくんだけが知ってるなまえさんにはなれないんですよ。ごめんね」
「あ……この前のことですね。いえ、俺が我儘を言ったのが悪いんです」
「良い悪いの話じゃないよ。私、チョタくんの我儘を叶えてあげようと思ってさ。
君に一つだけ私の重大な秘密を…チョタくんしか知らないなまえさんを授けようじゃないか」
「秘密…ですか?」
「うん。ほら、しゃがんで!耳貸して!」


「…で、その後さ、
『いつか…本当に俺だけが知ってるなまえさんにできるように俺、頑張ります!』って言われたんだ」
「それで?何て返したんですか?」
「頑張れ!って応援しといた。
いやー、日吉くんのおかげでチョタくんが笑顔になったよ!ありがとう!これお礼のぬれせんべい……うぐっ!?」

日吉くんに感謝を込めてぬれせんべいをあげたら頭を思いっきり叩かれた。見上げたら、日吉くんは私を睨みつけながらぬれせんべいの袋をパアンッと乱暴に開封していた。

なんでそんなにイライラしているのかは知らないけど、こんな凶悪な顔してぬれせんべいを食べる日吉くんを知ってるのは私だけかもしれないね。
いつも下克上な日吉くんばっかりだからね!
みょうじさんは嬉しいぞ!

2016/9/7修正

テニプリの2年生ってなぜあんなに可愛いのだろうか。

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