待ちに待ったケーキバイキング。
しかし、ドタキャンが2人。

1人はバカ兄貴。
こちらは休日なのに数学の補習。
数学という点がやはり兄妹か……。

もう1人はモンブランヤンキー。
モンブラン食べたいとか言ってたくせに理由もなく「また別の日にしろ」というメッセージ一件のみ。許さんぞ。

ドタキャン2人で私はぼっちになってしまった。ぼっちが嫌なわけじゃないが、割引券の期限は迫りつつある。勿体無いという気持ちが作用するのと自分の食欲が落ち着かないというのもあって、結局誰かを誘うことにした。

「ということでジローちゃん、一緒にケーキバイキングでもどうですか?」
「A〜!ケーキバイキング!それE〜ね!」

30人しかいないアドレス帳を見ながら、いけそうな人に声をかけた(跡部くんと忍足くんは除外)結果、捕まったのはジローちゃんだけだった。


「なまえちゃんとケーキバイキング嬉C〜!」

話は脱線するが、ジローちゃんという生き物は天使である。神が遣わしたアークエンジェルである。
こんなアークエンジェルの名前を知らなかったこの前までの私を殴りたい。「お前はなんて罰当たりな奴なんだ」と……。

「なまえちゃん何で泣いてるの?」
「いやジローちゃん……かつての自分に対して泣いてるの」
「よしよし泣かないで〜」

この圧倒的天使よ。
その愛らしさを私にも是非分けて欲しい。

「それでなまえちゃん、まだ着かないの〜?」
「そろそろだよ。このアーケードを突っ切ったらすぐ」
「じゃあさ!早く行くC!」

ジローちゃんが私の手を握って走り出す。
こ、こんな天使と手を繋いでドキドキしちゃうなんて私ってなんて罰当たりなの!恐れ多いわ!なんて浅ましい女なの私!

……と、考えていたらジローちゃんはケーキ屋の目の前を通り過ぎた。

やりすぎ!

「あああ!ジローちゃん!ケーキ屋!ケーキ屋を通り過ぎてる!」
「えー?なにー?聞こえないC!」
「だーかーらー!ケーキ屋を通り過ぎ……うぐっ!」

きゅきゅきゅーっというアニメ音を立てて、ジローちゃんが突然立ち止まる。振り返って、既にスルーしたケーキ屋の方を見ている。
やっと気付いたか……。

「ジローちゃん、あのね、人間って、突然止まると心臓も止まっちゃうんだぜ、死ぬかと思ったぜ」
「丸井くんの気配がするC」
「そうだね、丸井くんの気配がするね……
って、ちょっと待て!」


ケ ー キ 屋 じ ゃ な い の か よ 。

それに丸井くんって誰だ!

「行こうなまえちゃん!丸井くんがいるC!」
「ジローちゃん、丸井くんって誰なの!?」
「丸井くんは丸井くんだC!」
「分かんないから!って、うわぁぁ!」

また私の手を掴んだジローちゃんがものすごい勢いでUターンして戻っていく。心なしかさっきより速度が上がっている……速い速い速い速い!私こけそうだよ!てゆーかジローちゃんいつも寝てるイメージなのがひっくり返ったよやばいよ!

「まーるーいーくーん!!!」
「ああああああ止まってジローちゃぁああんんんんんん!!!」
「あ、丸井くんいた!」
「うぐぅっ!?」

……ジローちゃん……。
また突然止まったな……。

「おー!ジロくんじゃん!」
「ぜぇぜぇ」
「丸井くん!丸井くんだ!久しぶりだC!」
「ぜぇ、ぐはっ、ふぅ……」
「ジローくんの彼女?死にかかってるぜぃ」
「あ、なまえちゃんどうしたの?大丈夫?」

ジローちゃんを恨めないのはジローちゃんが可愛いからだ。
……可愛いは正義を命を以って知ったぜ。

2016/9/7修正
ブンちゃんとジローちゃんは正義。

[ ]