「今日抜き打ちで持ち物検査があるらしいよ」
「ななななんと」

きき、奇襲じゃー!
明智光秀の軍じゃー!

「お、みょうじじゃねーか。いつもより早いな」
「敵は本能寺にありだよ宍戸くん」
「は?」
「今日は抜き打ちで持ち物検査があるらしいよ!あ、あとおはよう」
「あぁ、なるほどな」

みょうじ語では「敵は本能寺にあり」を「持ち物検査がある」というらしい。さしずめみょうじが織田信長、先生が明智光秀って所か?

「うーん……また反省文書かされちゃう」
「反省文って……激ダサだぜ。何か変なもんでも持って来てるのか?」
「全然」
「じゃあ何で反省文なんだよ」
「校則違反じゃないが学校で使わないようなものを大量に持ち込んでるからだろ?なぁ、樺地」
「ウス」

背後から跡部と樺地の声がすると、みょうじの顔が一気に強張る。無理もないといえばそうか。

この前の一件でみょうじは跡部ファンを中心とした一部の女子陣に冷たい目で見られているようだ。
だが、みょうじはあの奇行種ぶりなので一部の女子陣からは相手にされてないのも事実。考えてると結局、みょうじは気にしてんのかしてないのかさっぱりだ……。

「おはよう樺地くん」
「おはよう……ござい……ます」
「俺様は無視か。いい度胸してんじゃねーか、アーン?」
「あ、いたんだ跡部くん」
「てめー……みょうじ」
「ごめんごめん」

……言葉に誠意がない。

「でも……まあみょうじが不要なものを持ち込んでるっていうのもなんとなく分かるな」
「むっ!失礼な!僕が持ってるものは全部22世紀が誇る科学の結晶だぞ!」

科学の結晶……。
それが本当かは分からないが、少なくともみょうじのカバンの中が未知の世界であることは間違いないだろう。

つーかみょうじのドラえもんのマネ上手すぎだろ!

「そういえば、なんで跡部くん私が反省文書かされてるの知ってるの」
「俺様を誰だと思ってやがる」
「はいはいキングキング」
「分かってるならいい」

いや、それで良いのか跡部。

「それで、今回はみょうじが反省文を書かされないように先に俺様が持ち物検査してやる」

跡部も、みょうじのことが相当気に入っているらしい。反省文書かせないように手を回してやるなんて、結構贔屓にされてる。

「……宍戸くんやばいよ!明智軍が来る前に跡部軍に奇襲された!」
「そんな風に言うなって。跡部はお前のこと心配してんだぜ」
「ぼ、僕は信じないぞ!そうやって跡部くんはいつも僕の道具を悪いことに使っちゃうんだから!」
「お前の鞄には一体何が入ってるんだよ」
「もう!物分かりが悪いんだから。僕のカバンには二十二世紀の科学の結晶が入ってるの!」
「ドラえもんやめろ」
「ごちゃごちゃ言ってないで早く渡せ!樺地!」
「ウス。失礼……します」

指パッチンと共に樺地がみょうじのカバンを取り上げる。みょうじの悲鳴が辺りに響く。

「跡部くん返して!樺地くんを使うなんて卑怯だぞ!」
「うるせえ!開けるぞ」

外で朝から女子のカバンを開ける……多分みょうじのことを女子だと思ってねえ。 それもそうだ。寧ろみょうじを女子と呼ぶことに無理がある。

「何だ……これは」

跡部がみょうじの摩訶不思議な四次元カバンを開けたまま固まる。

「え?知らないの?」

跡部の横から覗く。俺も絶句した。

「跡部くんお金持ちすぎてパズルも知らないの?」

カバンの中は大量のジグソーパズルのピース。

「パズルは知ってる。知ってるが……」
「なんだこのパズルのピースの山……何に使うんだよ」
「用途も何もパズルは組み立てる為にあるに決まってるじゃん」


どうせみょうじのことだ。
意味もなく突発的に学校でジグソーパズルを組み立てたくなったんだろう。

しかし、カバンを開けたら大量のジグソーパズル。
情けないが正直ぞっとする。

「お前…明智光秀だな」
「えっ、何で?」


2016/9/7修正

何が入ってるか分からないのが怖い。

しかも最初蕎麦ボーロが入ってるとか考えてました。美味しいですよね。
意味不明な展開ですが、主人公をそういう設定にしてるので許して下さい。
[ ]