「俺様がお前の30番目の男になってやる」という跡部の告白(ただ連絡先を聞きたいだけ)の前になまえちゃんは、ただただ口をあんぐり開けて突っ立っている。あかん、やはり事故ったか。

「30番目の男……だと……」

「あかんな……クソ○ッチ呼ばわりされてショック受けとるな」
「みょうじさんはそんな人じゃないです!」
「分かってるから、落ち着け」
「……なまえかわいそーだな」

結局、授業が終わって颯爽となまえちゃんのとこに行ってしまったという跡部を追って行くと鳳や岳人、意外にも日吉に出会って影から見守っているわけなんやけども、正直あの渦中の中に飛び込まなくてほんまに良かった。

3年C組は現在爆心地と化している。

「分かったなら返事くらいしやがれ」

跡部のこの一言で更に事態は悪化する。
周囲の女子達が「そんな跡部さまぁぁ!」「そんな女のどこがいいの!?」と騒ぎ出す。

「みょうじって変わってるって思ってたけど実はイケイケなんだな」
「タミフルなまえが跡部を落とすなんて…」

……あかん、男子にまで飛び火してもうた。
ちゅーかなまえちゃん、タミフルなまえなんて呼ばれてるやんか。完全にタミフルが風評被害被っとるやん。

「……分かったも何もなぜ人をクソ○ッチ呼ばわりするんじゃあああ!こぎゃん人がいっぱいおるとに!嘘ばっか言って何がしたかとね!?」

劇画チックに涙を流しながら、跡部に掴みかかるなまえちゃん……背中のジローのことなんてすっかり忘れてるんやな。しかし、こんなに煩いのにジロー寝過ぎや。

「最早標準語ですらなくなっとるな」
「なまえはキレるとすぐ熊本弁になるからな!」

なまえちゃん熊本の子なんやな。

「みょうじさん!落ち着いて!」
「離してチョタくん!私跡部くんをぎゃふんと言わせんと気がすまんの!」
「喧嘩はいけません!」

ほら、そんなことしてる間に平和主義博愛主義の鳳が止めに……!ちゅーか鳳何しとるん!?

「俺は止めたんですけどね」
「日吉、お前なぁ……鳳を特攻させる必要ないやろ」
「そう思ってましたよ。でも聞かなかったので」

「がるるるるるる」
「落ち着いて下さい!みょうじさんの可愛らしい顔が台無しです!」
「ぐるるるるるる」
「いつもの優しいみょうじさんに戻って下さい!」
「ぎゃるるるるる」

普通の女子なら可愛いなんて言われたら歓声を上げる所やけどなまえちゃんは威嚇しかせえへん。隣にいる宍戸が「長太郎……お前アシタカみたいだぜ」と言うとる。
ほんまや、鳳がアシタカ、跡部がエボシ様、なまえちゃんがサ……じゃないな。祟り神やな。あれは。

「おいみょうじ」
「フシャー!」
「何を勘違いしてんだてめー。俺様は連絡先を聞きたいだけだ」
「ダネフシャー!……ん?」

……最後の威嚇はポケモンみたいだったんは置いといて、なまえちゃんはようやっと鎮まりたもうたみたいや。 

「連絡先?」
「連絡先30人目の枠に俺様が直々に入ってやろうって言ってんだ。なあ樺地?」
「ウス」

周囲から何だそれだけか、という声が上がる。
流石に女子達はそれを許す雰囲気ではないのも確かやけど、緊迫は流れた。爆心地も小火状態や。

「連絡先かぁ。教えるのは構わないんだけど……」

なまえちゃん?何かのフラグ?

「今朝に文化活動委員の委員長と連絡先交換したから30人目の枠はもうないんだよね」

……ほんまに期待を裏切らへんのやな。


2016/9/7修正

爆睡するジローちゃんがしがみついたままで跡部につっかかる主人公、止めに入る鳳アシタカ、若干おろおろの樺地、カオスワールドに呆然とする宍戸、そして遠巻きに事の行く末を見守る傍観者忍足と日吉と向日という構図である。
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