『日吉くん』

通知が入った。
アイコンはなぜか……銅鐸。
そして名前は……雄っぱい提督♂。

あまりに怪し過ぎるので返さなかった。とりあえず既読無視で様子を見る。

『あれ?』

『日吉くんじゃないの?』

『ねえ?』

『お姉さん泣いちゃうよ?』

直後泣き顔のドラえもんスタンプが送られてきた。
ドラえもん……あ。まさか。

『みょうじさんですか』

『日吉くんんんんんん!やっぱり私には日吉くんしかいないよ!』

画面の向こうからわぁぁんという泣き声が聞こえてきそうだ。泣いてる姿さえ容易に想像できる。

『LINE始めたんですね』

『うん。本当にスルースキル一流だよね』

『用件は?』

『見ての通り、私は雄っぱい提督♂になってしまったんだ……誰も私と気付いてくれない』

『名前変えればいいでしょう』

『それができないから日吉くんに聞いてるんだよ。どうすればいいの?』

『自分でやったんじゃないんですか?』

『くそあにきいつかころす』

『読みにくいのでやめて下さい。
自分のプロフィールに戻って、設定からできますよ』

去年会った頃から思っていたのだが、この人はかなり新しいものの扱いがかなり苦手だ。今までの話すときはいつもメールか、または電話か。それか直接会って話す方が好きなアナログタイプだ。

『おう!ありがとう』

みょうじさんのレスポンスが途絶える。名前を見ていると、表示が変わった。


《江田島塾長》

……一体誰だ。

『誰なんですか……』

『魁男塾知らないの?昔WJで連載してたよ』

『あなたバカなんですか?いやバカでしたね。失礼しました』

『めっちゃ失礼してんじゃん』

『そんな名前じゃ結局誰にも気付いてもらえないでしょうが』

『ああ!なるほど!そうやって最後は優しく諭してくれる日吉くん大好きだ』

『厳しく説教しているんですよ』


結局、みょうじさんの名前は《みょうじ塾長》になった。そんなに塾長が良かったのか。
……そして、銅鐸のアイコンは変わらなかった。

いたって意味不明な所に妥協しないのが、みょうじさんらしいといえばみょうじさんらしい。


「やあ日吉くん!」
「……何ですか」

日吉くんの教室に遊びに行った。案の定日吉くんは『何で来たんですか』という冷たい目をしてきた。言葉に出さないだけ日吉くんは優しいと言えよう。

「君にこれを持ってきた」
「…何ですか?これ。無駄に重いですね」
「魁男塾全巻ある」
「…」
「やめろおおお!窓の外には放り出さないで!お兄ちゃんと集めたんだぞ!しかも初版!」

かつてこの世にこんな残酷なキノコが存在しただろうか。血も涙もない……キノコに血も涙もそりゃないけど……。

「返しますよ。大事に集めたんでしょう?」

日吉くんは魁男塾が入った紙袋を私に素っ気なく突き返してくる。しかしながら発言が。

「日吉くんツンデレ」
「うるさいですね」

日吉くんはツンデレさんなのである。多分モテるぞこの男。

「じゃあ昨日のお礼に持って来たんだけども……焼き増しした兄貴撮影UFO写真も持って帰るね」
「それは昨日のLINE授業料として頂きます」

……好きなものに妥協しないとこもよいね。



2016/9/7修正

氷帝2年達は3年よりモテそう。

魁男塾知らない人多いんですが、大変面白い漫画です。妥協しない男達のお話です。とりあえずアメ◯ークの男塾芸人はファンでも楽しめる出来でした。
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