「クソクソ!なまえ!」
「そんな怒んなくていいじゃん。堀北○希似の40代に慰めてもらおうぜ」
「そのアイスに慰めてもらう!」
「これ私のアイスだから!がっくんもう3つ食べてるじゃん!」
「そういうなまえは5つは食べてるだろ!」
「幻覚じゃない?それより跳ぶのずるい!返せ!」
「もっと高く跳んでみそ」
「ほら岳人、人様の家で跳んだらあかん。なまえちゃんもや」
「何で忍足くんいるの」
「何でって…岳人の所になまえちゃんからメールあったん見て来たんや。ちょうど岳人の家におったから」

がっくんと一緒に友人宅に乗り込んできたのは忍足くんであった。忍足くんの声は相変わらず、私の背中をゾワゾワさせる。

「なまえと侑士って友達だったんだな」
「そんなわけないじゃん」
「なまえちゃん、ほんま何でなん?何で俺にそんな冷たいん?」
「いや…何か本能(管理人)が『忍足くんをいじれ』と告げる」
「漢字に漢字ルビ振るのやめや。つーかメタやで」

だいたいこの2人のせいでただでさえ進んでいなかった絵が更に行き詰まってしまった。

「全然進んでないじゃない。早く進めなさいよ」
「美術部員様ー助けてよー」
「自分でやりなさいよ。これ読み終わったら修正するから」

友人はやはり18禁同人誌を読んでいる。
だから、そういうのは自宅のみで隠れて読むのがエチケットじゃないかい?私はともかく目の前にはがっくんもいるんだぞ。教育に悪い。忍足くんは知らん。
あ、でもここ彼女の自宅か……。

「つーか何だよこの絵」

がっくんがアイスをくわえたまま横から私の絵を覗き込んできた。

「読書感想画だよ」
「俺たちのクラスはスケッチやからなぁ」
「うるさいな、黙っててよ」
「ちょ、ほんまに泣くで」

泣き真似が何とも胡散臭い。最早がっくんも忍足くんを無視して私の絵を写メっている…ん?写メっているだと?

「がっくん、何で写メってるの?」
「いや…なんかすげーと思ってさ。聞くけどさ、これ何?」
「犬」
「嘘やろ…」

忍足くんが口元を抑えて、肩をプルプル震わせる。
何だ、何がそんなに可笑しい。

「……下手くそだな」
「岳人!言うたらあかん!なまえちゃん傷付くやろ!」

心なしか2人の発言には「www」が付いている気がする。……そんなことより下手くそだと!?

「犬っつーか、へっぴり腰でアホ面の……いや、他の動物で例えるのも失礼だな」
「何だよ!人並みでしょ!」
カシャ!
「あんたまで撮るな忍足くん!」
「見ようによっては芸術的価値があるで。なまえ画伯」
「さっき言うたらあかんとか言ってたのは誰!?」

がっくんは嘘つけないからいいけど忍足くんは腹が立つ。これ私に復讐してない?忍足くんから言われるのが一番傷付く、それどころか追い打ちのように塩を塗ってるよ?

「岳人もなまえも忍足君もうるさいな。ほら、なまえ。手伝ってあげるからこの煩い2人連れて出て行くのよ」
「辛辣!」

辛辣な言葉とは裏腹に愉快そうな友人の顔。
後日、本人によるとあまりの絵の素晴らしさに直視できずずっと同人誌読んでたんだそうな。
それ聞きたくなかった。

「仕方ねえな。俺も手伝ってやるぜ」
「ほな、俺も」
「2人はいいよ。がっくんは必要ないことするだろうし、忍足くんは何と無くだけど固くお断りさせてもらう」
「何と無くだけど固辞な……堀北○希似の40代と通じるものがあるなぁ」
「ほら、なまえ!お前があんまり侑士に冷たいから何か別の方向に変わっちまっただろ!」
「なんかごめん」

結局のところ、友人とがっくんと忍足くんに手伝ってもらって、なんとか絵は完成した。悔しいが忍足くんは絵がそれなりに上手かった。がっくんは余計なものを描いてくれた。納豆とかファンタジーの世界観ぶち壊しだよ。

「じゃ、気を付けてね」
「うるさくしてごめんね」
「今度アイス奢ってくれたら許す」
「だってよ、がっくん」
「なまえが一番食べただろ!」
「突然訪問して悪かったなぁ。見ず知らずの俺まで」
「いいのよ」

随分騒がしくしてしまった友人宅を出て、がっくんと忍足くんと分かれる。送るという忍足くんの誘いは再び固くお断りして、駅まで歩く。なんだかんだ今日は楽しかったなぁ。

ちゃっちゃちゃ〜♪ちゃちゃちゃちゃっちゃちゃ〜ん♪

「お、メールだ」

『from 忍足くん
件名 今日はお疲れさん
なまえちゃんの犬の絵、待ち受けにさせてもろたでww』


直後届いた迷惑メールを今度は間違いなく忍足くんに転送した。


2016/08/30修正

強制終了してしまった。
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